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執筆者の写真Ryuji Kanemoto

【建設業者必見】一括下請負の禁止|正しい理解で「しない」「させない」

更新日:4月9日


一括下請負の禁止の見出し画像

建設業法では、建設工事が適正に行われ、発注者に損害が出ないように工事現場でのルールや契約締結におけるルール等が定められています。


中でも元請下請関係の適正化に関するものが多くみられます。建設業界特有の重層下請構造が原因でいろいろな問題が起こり得るからです。

 

「一括下請負」いわゆる工事の丸投げを禁止する規定もその1つです。


本記事では、そもそもどんなケースが「一括下請負」に該当するのか、もし「一括下請負」をしてしまった場合どんな処分をされるのか等、気になることを詳しく解説しています。


ぜひご参考にしていただければと思います。



建設業許可の問合せ先


▼目次



そもそも「一括下請負」がなぜ禁止されているのか



発注者は建設工事を発注する際、金額だけではなく、施工能力や施工実績、資金力、社会的信用等、さまざまな観点からどこの建設業者に発注するかを検討します。


建設業者を決定し請負契約を締結した後に、もしその建設業者が請け負った工事を他の建設業者に「一括下請負(丸投げ)」していたとしたらどうでしょう。


発注者の検討は意味のないものになりますし、発注者の信頼を裏切ることにもなります。


そして、「一括下請負」がまかり通ると、中間搾取や労働条件の悪化といった下請業者への実害、工事の質の低下といった発注者への実害も当然に起こり得ます。


さらに自らは施工できないブローカーのような業者が増えてしまうかもしれません。


そのため、建設業法第22条で「一括下請負」の禁止が規定されているのです。



(参考)建設業法第22条

1.建設業者は、その請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。


2.建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはならない。


3.前2項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。


4.発注者は、前項の規定による書面による承諾に代えて、政令で定めるところにより、同項の元請負人の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって国土交通省令で定めるものにより、同項の承諾をする旨の通知をすることができる。この場合において、当該発注者は、当該書面による承諾をしたものとみなす。



どんなケースが「一括下請負」にあたるのか


請け負わせた側がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、

以下の場合に該当するときは、一括下請負に該当するとされています。


●請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工 を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合

● 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機 能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括し て他の業者に請け負わせる場合


元請・下請間だけでなく、1次下請・2次下請間のように下請間でも同様です。


◎実質的関与がみられるかどうかが重要なポイント

一括下請負にあたるかどうかの判断基準である「実質的関与」とは、どのようなことを指すのでしょうか。


以下の①~⑩について主体的に関わることとされています。(※⑦~⑩については元請にのみ求められます。)

単に主任技術者等を配置しているだけでは主体的に関わっていることにはなりません。


主体的な関わりがない場合は実質的な関与がないとされます。

 

①施工計画の作成

②工程管理

③出来形・品質管理

④完成検査

⑤安全管理

⑥下請業者への指導監督

⑦発注者との協議

⑧住民への説明

⑨官公庁等への届出等

⑩近隣工事との調整

 

◎一括下請負の具体的な事例


「請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工 を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合 」とは次のような場合が考えられます。


▶事例

照明器具入替工事(本体工事)において、本体工事のすベてを下請に施工させ、照明器具入替工事に伴って生じた天井張替え工事(附帯工事)のみを元請が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合


「請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機 能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括し て他の業者に請け負わせる場合」とは次のような場合が考えられます。


▶事例

住宅5戸の新築工事を請け負い、そのうちの1戸すべての工事を下請に施工させる場合



合法的な「一括下請負」もある


例外として一括下請負が認められるパターンがあります。


建設業法第22条の3項に規定されています。

“建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。”

民間工事に限り、あらかじめ発注者から承諾を得ていれば、一括下請負が可能になります。


ただし、共同住宅や大型商業施設、ホテル等の新築工事は承諾を得たとしても一括下請負は禁止です。


2次下請から3次下請に一括して請け負わせる場合も発注者の承諾が必要になります。この場合でも元請が承諾するわけではありません。




違反するとどのような行政処分が科されるのか


国交省のネガティブ情報等検索サイト(https://www.mlit.go.jp/nega-inf/)をみると、「一括下請負」に関して、毎年一定数の行政処分が行われていることがわかります。


配置技術者の配置義務違反や施工体制台帳・施工体系図の作成義務違反等、関連する規定にも違反している事も多く見られます。


もちろん元請・下請ともに建設業法第28条3項に基づく営業停止処分を受けることになります。


 

最後に


建設業許可を取得した後に、建設業法に違反して処分を受けてしまうことはよくあります。


知っていながら違反するのは別問題ですが、知らずに違反してしまうケースはなんとか避けたいところです。

特に工事現場におけるルールは正しく理解した上で、違反を未然に防ぐようにしましょう。




この記事は行政書士が執筆・監修しています。

アールエム行政書士事務所/代表/金本 龍二(かねもと りゅうじ)

本記事は建設業に特化した事務所の行政書士が執筆・監修しています。

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