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  • 執筆者の写真Ryuji Kanemoto

【建設業の問題点】大手建設会社の不正会計から学ぶこと

更新日:2023年12月9日


建設業許可/申請代行/元請・下請の関係

今夏、大手建設会社の所長が、担当する工事の損失を隠蔽するために不正な会計処理を行い、諭旨解雇されていたことがニュースで取り上げられていました。


不正な会計処理を行ってしまう会社は毎年少なからずあるので、いまさらこの大手建設会社の件の是非を問うつもりはありません。


現状の建設業の業界構造には多くの問題があり、様々な対策が検討されています。

今回のような不正会計事案を見ているとこの大手建設会社だけの問題ではなく、根底には業界構造の問題があるように思えてきます。


この記事では、今回の不正会計事案の経緯を振り返りながら、浮かび上がる建設業界の問題点(個人的見解)を取り上げています。



不正会計の概要


大手建設会社の所長が、担当した某大型商業施設新築工事など複数の建設工事の収支悪化・損失を隠すために数年前から行っていたようです。


本来、数社の下請業者に支払うべき工事代金数億円を支払わず、下請業者にそのまま肩代わりさせていました。

下請け業者は、別の工事で返済する、穴埋めするという提案をやむなく受け入れたようです。今後の仕事がもらえなくなるかもしれない、とか考えてしまったのかもしれません。


具体的には予算に余裕のある他の工事で、架空に原価を高く設定し、本来の原価との差額を下請業者への返済に充てていたようです。


いわゆる原価の付け替えという不適切な会計処理です。事業年度を跨ぐ粉飾決算はなかったようですが、自転車操業状態に陥るのは明らかです。

結局、この所長は諭旨解雇という処分が下されたようです。



見えてくる問題点


この一連の不正には所長自身の問題や社内的な問題があったのだと思いますが、本当の問題がどこにあるのかは内部の調査でしか分からないことだと思います。

ただ、現状の建設業界の構造的な問題も関係しているのではないでしょうか。


◎予算達成へのプレッシャー

建設業に限らず、会社の従業員が不正会計をしてしまう理由は、営業予算を達成させるためというのがほとんどでしょう。過度な数字至上主義がそうさせているのだと思います。


営利組織である以上、1人1人が営業予算達成に向けて強い意識を持つことは当然ですし、営業予算達成へのプレッシャーがかかるのも、ある程度仕方のないことだと思います。しかし、プレッシャーがキツすぎて従業員が不正まで行ってしまう環境というのはさすがに問題です。


今回の件は、請け負った工事において実行予算からどんどん乖離していき、結果、見積り利益に届かないどころか、赤字になってしまったというパターンです。利益率が悪化するだけでも理由書なりを提出させられる会社がほとんどだと思うので、赤字となると相当厳しい処分があったのかもしれません。


◎元請・下請の力関係

下請は元請に比べて構造的に利益率が低くなる傾向にあります。

それに加えて、ずさんな原価管理などが原因で工事が完了してはじめて赤字に気付くということさえあります。


まさに薄利多売といった感じで、とにかく売上高優先で利益率よりも1件でも多くの工事を受注することにこだわる下請業者が多いのです。


継続的に仕事を受注したい下請は、相対的に立場が弱くなり、元請の要求に応え続けざるを得ないことが多くなります。今回の件もそのような構図があてはまるのかもしれません。


請負代金が支払われず、先延ばしにされるようなことは絶対にあってはなりません。

下請保護のために建設業法でいろいろな規定が定められていますが、下請業者から国交省への苦情が絶えません。大半が元請や上位下請の請負代金支払いに関するものです。


◎発注者・元請の力関係

発注者から直接注文を受ける元請業者も資材原価や労務単価の高騰で利益を上げづらい状況になりつつあります。


公共工事の場合は、発注者が賃金水準や物価水準にあわせて設計を見直したり、請負代金を変更したりしますが、民間工事の場合は、なかなかそういうわけにはいきません。


民間工事の発注者は、資材原価や労務単価が上がっていても工事予算を引き上げるようなことはほとんどしないでしょう。


設計や仕様の見直しをしたりすることもなく、従来通り工事業者に過剰な価格競争を強いることになります。

工事業者が発注者の要望通りの発注額に合わせにいくために結果的にダンピングのようなことが起こります。

工事が進行する中で追加工事が発生しても工事業者に肩代わりさせるようなことも多く見られます。

 

最後に


建設業界は担い手不足、資材価格の高騰をはじめとするたくさんの課題を抱えており、環境整備に向けた議論が続けられています。


担い手不足の解消には技能者の賃金水準や労働環境の改善、資材価格の高騰への対応には発注者側による設計見直しや仕様見直しが必要不可欠です。


その他、下請重層構造といった根本的な問題を解決しなければ、建設業界の健全な発展は難しいかもしれません。


建設業法は業界の健全な発展を目指して制定されています。


行政書士は法律を扱う職である以上、単に書類作成や申請代理を行うだけでなく、建設業法の主旨をしっかりと受け止めながら、業界の課題改善に繋がるような働きかけも意識したいところです。

微力ながら、当事務所はそのような考えで建設業者さまのサポートをさせていただいております。

 

当事務所では建設業許可の申請代理、その他経営事項審査や入札参加資格申請までサポート全般を承っております。


大阪市鶴見区・城東区・都島区・旭区を中心に大阪府全域、奈良県、兵庫県、和歌山県は標準対応エリアです。

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