建設業界では技術者の不足が大きな課題となっています。
主任技術者や監理技術者を適正に配置するにあたり、専任性や配置期間、雇用関係等といった制約があるので人員確保が難しいというのが実情です。
少しでも技術者不足の解消につながるよう、近年様々な改正が行われてきました。
企業集団制度もその1つです。令和6年には、より合理的な内容に見直され、今後の活用拡大が期待されます。
▼目次
(2)企業集団制度の確認方法
4.最後に
監理技術者等は「直接的かつ恒常的な雇用関係」が求められる
主任技術者や監理技術者といった技術者は経験・資格があれば誰でもいいわけではなく、所属建設業者との「直接的かつ恒常的な雇用関係」が必要です。
原則、出向社員は認められないということになります。
◎直接的かつ恒常的な雇用関係とは
【直接的な雇用関係】所属建設業者との間に第三者が入る余地のない雇用関係 直接的かつ恒常的な雇用関係が認められないケース…在籍出向、派遣社員など |
【恒常的な雇用関係】一定の期間にわたり所属建設業者に勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されている雇用関係 恒常的な雇用関係が認められないケース…1つの工事の期間のみの短期雇用 |
◎営業所専任技術者と経審の技術職員(加点対象)はどのような雇用関係が求められる?
▶営業所の専任技術者に求められるのは「専任性」
建設業許可事務ガイドラインで以下のように定められています。
“「専任」の者とは、その営業所に常勤して専らその職務に従事することを要する者をいう。会社の社員の場合には、その者の勤務状況、給与の支払状況、その者に対する人事権の状況等により「専任」か否かの判断を行い、これらの判断基準により専任性が認められる場合には、いわゆる出向社員であっても営業所技術者等として取り扱う。”
派遣社員は給与の支払や人事権が派遣元に属することから「専任性」が認められないことがわかります。
▶経審の技術職員に求められるのは「恒常的雇用関係」
「経営事項審査の事務取扱いについて(国交省通達)」で以下のように記されています。
“審査基準日以前に6か月を超える恒常的な雇用関係があり、かつ、雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている者(法人である場合においては常勤の役員を、個人である場合においてはこの事業主を含む。)とする。”
派遣社員や有期雇用は、雇用期間を特に限定することなく常時雇用されているとはいえないため「恒常的雇用関係」が認められません。
企業集団制度という特例
出向社員は「直接的かつ恒常的な雇用関係」が認められず、主任技術者や監理技術者になれませんが、一定の企業集団内の親会社・子会社間の出向であれば認められる特例があります。
【要件】 ①親会社が会計監査人設置会社 ②親会社・子会社ともに建設業許可業者 ③親会社・子会社のいずれかが経審を受けていない ④親会社・子会社(非連結も)が下請負人ではない |
事前に企業集団確認を申請し、確認書の交付を受けていれば
出向社員を主任技術者や監理技術者として配置することができます。
企業集団制度の「即時配置可能型」と「3カ月後等配置可能型」
企業集団制度による特例とはいえ、まだまだ限定的なものなので、以前より制度の柔軟化が求められてきました。
そこで、業界のニーズに応えるため、令和6年に運用の見直しが行われました。
◎R6年改正後の企業集団制度の概要
「即時配置可能型」と「3カ月後等配置可能型」が併存
従来の運用は「即時配置可能型」として継続(企業集団確認の有効期間を1年から3年に変更)
新たな運用を「3カ月後等配置可能型」として規定
「3カ月後等配置可能型」では、従来の要件
②親会社・子会社ともに建設業許可業者
③親会社・子会社のいずれかが経審を受けていない
④親会社・子会社(非連結も)が下請負人ではない
が求められなくなり、大きく緩和されました。
ただし、公共工事の元請の場合は、入札申込のあった日以前に3か月以上の雇用関係が必要になります。
また、連結子会社同士の出向の場合でも入札申込のあった日以前に3か月以上の雇用関係があれば、出向社員を監理技術者等として配置することができるようになりました。
◎企業集団制度の確認方法
「即時配置可能型」は従来どおり、企業集団確認申請後、以下の必要書類を確認できる状態にしておき、注文者の求めに応じて提出しなければなりません。
企業集団確認申請の方法については国交省HPにてご確認ください。
(必要書類)
・雇用関係を示す書類
・出向契約書、出向協定書等
・企業集団確認書
・施工体制台帳等
「3カ月後等配置可能型」は、以下の必要書類を確認できる状態にしておき、注文者の求めに応じて提出しなければなりません。
(必要書類)
・雇用関係を示す書類
・出向契約書、出向協定書等
・有価証券報告書等
最後に
企業集団制度について解説いたしました。
現在の企業集団制度をまとめると、
✅従来の運用は「即時配置可能型」として継続(有効期間は3年に延長)
✅「3カ月後等配置可能型」は要件が大幅緩和
✅「即時配置可能型」「3カ月後等配置可能型」いずれを選択することも可能
令和5年9月末時点で企業集団認定されていたグループは104グループと少なく、以前の運用では要件クリアが難しかったことがうかがえます。
現在の企業集団制度は、以前に比べ要件がかなり緩和されたので今後活用するグループが増えてくるでしょう。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。 ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、 建設キャリアアップシステムをサポート。 |
当事務所では、大阪府知事の建設業許可を中心に申請代理、その他経営事項審査や入札参加資格申請までサポート全般を承っております。建設キャリアアップシステムについても代行申請を全国対応で承っております。
ぜひお気軽にご相談ください。ご相談はお問合せフォームからお願いいたします。
Comments