「建設キャリアアップシステム(CCUS)」とは、建設業技能者の現場ごとの就業履歴、保有資格、社会保険加入状況等を登録・データ蓄積し、客観的に技能者を評価できる仕組みのことです。
国が主導し、2019年4月から本格的に運用されています。
現時点では「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の登録は任意(外国人の受け入れを除く)ですが、以前から発表されているとおり、近年中には民間工事、公共工事を問わず、登録が完全義務化されることになるでしょう。
すでに建設キャリアアップカードがなければ入れない現場が増えていることを実感している方も多いのではないでしょうか。
この記事では建設キャリアップシステムの目的やシステムの概要等、基本事項をまとめています。
ぜひご参考にしていただければと思います。
▼目次
6.最後に
当事務所の建設キャリアアップシステム代行申請サービスの料金等は以下のリンクからご確認ください。
建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入目的は「建設業界の魅力を高めること」
建設業界では就業者数の減少が非常に大きな問題となっています。
高齢化と若者離れが他業界よりも深刻です。
現場技能者の労働環境や処遇等を解決することが業界全体の魅力を高めることにつながり、結果的に将来にわたって建設業の担い手を確保できると考え、「建設キャリアアップシステム(CCUS)」が導入されました。
導入の目的は一言で言うと「建設業界の魅力を高めること」と言えるでしょう。
出典:総務省「労働力調査」(暦年平均)を基に国土交通省で算出
◎現場技能者の減少の原因はどこにあるのか
建設現場で働く若者が求めることのトップ3が「週休2日制の推進」、「仕事が年間通じてあること」、「能力や資格を反映した賃金」と言われています。
まさに建設業界の労働環境がキツいということの表れでしょう。
休みもなく、能力やスキルアップが正当に評価されず、賃金の向上にもつながらないようでは、若者の新規就業者が増えないのは当然かもしれません。
工期基準のガイドラインが出されたり、残業規制が適用されたり(2024年~)、休みや労働時間に対する対策は徐々に広がりつつあります。
処遇の改善についても早急な対策が必要な状況です。
◎「建設キャリアアップシステム(CCUS)」が目指す方向
建設業界の魅力を高めていくために3つの方向性が示されています。
①技能者の就業履歴を蓄積し、保有資格などとあわせて能力を公正に評価し、処遇の改善を図る。
②技能者のキャリアパスを明確にして若い世代の入職者を増やす。
③優秀な技能者を抱える専門工事業者の施工能力を見える化して競争力を高め、かつ業界の健全化を図る。
出典:CCUSホームページ内資料
建設キャリアアップシステム(CCUS)の概要
建設キャリアアップシステム利用の流れは以下の通りです。
①技能者情報等の登録
事業者、技能者、現場情報をシステムに登録する。一人親方は事業者登録、技能者登録の両方が必要。
②カードの交付・現場での読取
交付されたICカード(建設キャリアアップカード)を技能者が現場入場の際にカードリーダーで読み取らせ、就業履歴を蓄積していく。
③技能者の経験の見える化・能力評価
蓄積された就業履歴データや資格情報が技能者別に見える化され、能力評価がしやすくなる。
出典:国土交通省ホームページ
建設キャリアアップシステム(CCUS)活用のメリット・デメリット
技能者の方や事業者の方からすると、「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の全体像の話よりも、実際に関わる立場として活用した場合に一体どんなメリットがあるのか、デメリットは何なのかといったことが気になるのではないでしょうか。
それぞれの立場によってメリット・デメリットは当然に異なります。立場ごとに解説します。
■ 技能者にとってのメリット・デメリット
■ 下請業者にとってのメリット・デメリット
■ 元請業者にとってのメリット・デメリット
◎技能者にとってのメリット・デメリット
●メリット
・公正に能力評価が行われ、賃金改善につながる。また、レベルごとの年収目安も見えてくる。
・どこにいっても自らの能力を客観的に証明できる。
・カードを利用して建退共掛金が積み立てられる。
●デメリット
・技能者登録料がかかる(有効期限10年)。
・登録の手間がかかる。
◎下請業者にとってのメリット・デメリット
●メリット
・自社が雇用する技能者の数や保有資格、社会保険加入状況等が明らかになり、取引先からの信頼を得やすい。
・技能者の能力評価と連動し、企業としての施工能力も見える化できる。
・出面管理が簡単になり、賃金・代金の支払い根拠を明確にできる。
・事務作業が効率化できる。
●デメリット
・事業者登録料がかかる(5年ごと)。
・管理者ID利用料がかかる(毎年)。
・登録の手間がかかる。
◎元請業者にとってのメリット・デメリット
●メリット
・下請業者の実力が客観的にわかり、施工の安心感につながる。
・現場管理が効率化できる。
・事務作業の簡素化、ペーパーレス化が図れる。
・公共工事においてインセンティブ措置がある。
●デメリット
・現場利用料がかかる(就業履歴回数ごと)。
・事業者登録料がかかる(5年ごと)。
・管理者ID利用料がかかる(毎年)。
・登録の手間がかかる。
建設キャリアアップシステム(CCUS)活用にはコストがかかる
技能者にとっても事業者にとっても唯一のデメリットはコストがかかることです。
お金、時間、労力といったコストがかかります。特にお金(利用料金)の部分が気になるところではないでしょうか。
建設キャリアップシステムの現時点での登録・利用料金を確認しておきましょう。
現場利用料は1人日・現場あたりに利用料がかかります。請求事例は以下の通りです。
・30人の技能者が90日間現場で就業した場合・・・30人×90日×10円=27,000円
・同じ日の午前と午後に同じ元請の別現場で就業した場合・・・1人日×2現場=20円/1人あたり
建設キャリアアップシステム(CCUS)の現状
本格導入されてから4年以上経過しているので、現在の利用状況がどのようになっているのかは気になるところです。
普及するのに時間がかかっている印象ではありますが、登録数は毎月確実に増えており、完全義務化に向けて今後さらに登録が加速すると思われます。
2024年6月末現在の利用状況は以下のとおりです。(国土交通省ホームページより)
技能者の登録数
146.2万人 ※全国の建設業技能者数は307万人(令和5年労働力調査)
毎月数万人単位で登録が増えています。
事業者の登録数
26.8万社 ※うち一人親方は17.7万者
毎月数千社単位で登録が増えています。
就業履歴数
現場での利用は増加傾向 ※累計は1億4千万履歴を蓄積
都道府県別にみると、技能者登録は大阪府105,754人、兵庫県46,054人、京都府21,748人、奈良県8,586人、
和歌山県5,862人となっています。
事業者登録は大阪府23,447社、兵庫県10,078社、京都府5,092社、奈良県1,563社、和歌山県1,093社となっています。(2024年6月末)
最後に
「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の内容を重要なポイントに絞って解説いたしました。
デメリットとして登録料・利用料といったコストがかかると説明しましたが、技能者・事業者ともに得れるメリットはそれ以上にあります。
このような業界あげての施策にいち早く対応している事業者というのは周りからの信用度も高くなるものです。
完全義務化の時期を待たずに先行して導入を検討してみてはいかがでしょうか。
業務多忙で対応できないという場合は、行政書士をはじめとする代行事業者に登録を依頼する方が良いかもしれません。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。 ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、 建設キャリアアップシステムをサポート。 |
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