
建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録し、キャリアアップカードを作ったものの、目に見える形でメリットを享受できていないと感じている技能者は多いのではないでしょうか。
キャリアアップカードのレベルアップが明確な処遇改善につながる事例がまだまだ少ないので、レベルが4段階あるキャリアアップカードはレベル1のままという技能者も多いでしょう。
そもそも建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録しただけでは、高いレベルのスキルを持っていてもレベル1のままです。
レベルアップさせるには、登録とは別に能力評価(レベル判定)申請をしなければならないのです。
レベルアップしても今すぐに何かが変わるという状況でなければ、わざわざ能力評価(レベル判定)申請をしてレベルアップする意味がないと感じるかもしれません。
しかし、今後、建設キャリアアップシステム(CCUS)の現場利用が増えていくとともにレベルに応じた手当や処遇改善が加速度的に進んでいくでしょう。
また、今のうちにレベルアップしておいた方が良い理由もあります。

▼目次
(2)評価結果
(1)評価の対象者
(2)評価の申請者
5.最後に
建設キャリアアップシステム(CCUS)には能力評価が必要不可欠
建設キャリアアップシステム(CCUS)の最大の目的は、技能者の経験やスキル等をデータ蓄積し、公正に評価し、処遇の改善を図ること、そして、技能者のキャリアパスを描き、業界の魅力を高めることです。
事業者にとっても自社の施工能力を見える化し、取引先に客観的に証明できるというメリットがあります。
当然ながら建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録(事業者登録・技能者登録)と技能者の能力評価が必要不可欠ということになります。

能力評価制度の枠組み
建設キャリアアップシステム(CCUS)の事業者登録や技能者登録、現場登録等は運営主体である一般財団法人建設業振興基金に申請することになっていますが、技能者の能力評価は「能力評価実施団体」に申請することになります。
「能力評価実施団体」とは専門工事業団体等を指し、評価分野(現在38職種)ごとに能力評価基準を策定し、その基準に基づき技能者の能力評価を行います。
◎評価項目と評価基準の基本要件
以下のように評価項目は大きく3つあり、それぞれ評価基準の基本要件が定められています。
具体的な基準は評価分野ごとに異なります
●経験
建設キャリアアップシステム(CCUS)に蓄積された就業日数を経験として評価します。
レベルに応じて求められる就業日数は、評価分野によって異なりますが、例えばレベル2は645日(3年)、レベル3は1075日(5年)、レベル4は2150日(10年)というように設定されています。
2019年に本格稼働した建設キャリアアップシステム(CCUS)において、現時点でそこまでの就業日数が蓄積されているということはありえないので、経過的措置として、建設キャリアアップシステム(CCUS)利用開始前の就業日数を対象とすることができます。
この経過的措置は2024年3月31日までの特例ですので、それ以降は建設キャリアアップシステム(CCUS)に蓄積された就業日数しか経験にすることができません。
いまのうちに能力評価(レベル判定)を申請しておく方が良いでしょう。
●知識・技能
建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録された保有資格等を知識・技能として評価します。
資格だけでなく、技能講習や特別教育、表彰なども含まれます。
●マネジメント能力
建設キャリアアップシステム(CCUS)に蓄積された職長・班長としての就業日数や登録基幹技能者講習等をマネジメント能力として評価します。
職長・班長としての就業日数は、現場の施工体制登録の際に職長または班長という立場で登録されて蓄積されたものが対象となります。
通常の就業日数と同様に経過的措置があります。
※経過的措置で通常の就業日数と職長・班長としての就業日数に、建設キャリアアップシステム(CCUS)利用開始前の就業日数を含める場合は、所属事業者による経歴証明が必要になります。
経歴証明の具体的な方法は、各能力評価団体によって異なりますので、ご注意ください。
◎評価結果
能力評価(レベル判定)はレベル1からレベル4の4段階となります。レベルごとの目安は以下のとおりです。
レベル1:初級技能者(見習いの技能者)
カードの色は白色で、建設キャリアアップシステム(CCUS)登録した直後は全員このカードになります。
能力評価(レベル判定)の申請をしてレベルアップするまでは白色のままです。
レベル2:中堅技能者(一人前の技能者)
カードの色は青色です。
建設キャリアアップシステム(CCUS)に蓄積された就業日数と保有資格等で判定されます。
就業日数は430日(2年)または645日(3年)、保有資格等は技能講習程度でクリアできる評価分野がほとんどです。
レベル3:職長として現場に従事できる技能者
カードの色は銀色です。
レベル2の基準を満たしていることが前提で、建設キャリアアップシステム(CCUS)に蓄積された就業日数と保有資格等で判定されます。
就業日数は1075日(5年)または1505日(7年)以上求められる評価分野がほとんどです。
さらに職長・班長としての就業日数が215(1年)または430日(2年)以上求められます。
必要な保有資格等は評価分野によって異なりますが、技能検定や特別教育、技能講習が中心となります。
レベル4:高度なマネジメント能力を有する技能者(登録基幹技能者等)
カードの色は金色です。
レベル2、3の基準を満たしていることが前提で、建設キャリアアップシステム(CCUS)に蓄積された就業日数と保有資格等で判定されます。
就業日数は2150日(10年)以上必要で、職長・班長としての就業日数が645(3年)以上求められます。
必要な保有資格等は評価分野によって異なりますが、施工管理技士や技能検定、登録基幹技能者が中心となります。
◎技能者の処遇改善に向けたイメージ
建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録と技能者の能力評価、処遇改善が進み、建設業界全体に好循環が産まれることが望まれます。
技能者のレベルに応じた労務費の見積りが明確に提示され、尊重されること等が必要です。

能力評価制度の基礎知識
能力評価申請は誰がどこに対して行うのか、評価分野の職種や能力評価実施団体まで制度の基本的な部分をまとめています。
◎評価の対象者
建設キャリアアップシステム(CCUS)に技能者登録している建設技能者が対象となります。
技能者登録は詳細型で行わなければ、能力評価を受けることができません。簡略型では能力評価に必要な保有資格等の登録ができません。
もちろん一人親方も能力評価を受けることができます。
一人親方の場合は、詳細型の技能者登録だけでなく、事業者登録も必要です。
◎評価の申請者
建設キャリアアップシステム(CCUS)に技能者登録している技能者本人が申請します。
所属事業者等が代行申請することも可能です。
所属事業者が能力評価実施団体に加入しているかいないかで能力評価申請の手数料等が異なるので能力評価実施団体のHPで確認する必要があります。
◎評価の対象となる職種(評価分野)と能力評価実施団体
2022年11月現在で能力評価基準が策定され、能力評価実施団体に対象職種として登録されているのは38職種です。
該当しない職種は評価対象となりませんが、順次対象が拡充される予定です。

能力評価の申請に必要な書類、流れ
原則、申請には以下の書類が必要になります。能力評価実施団体によって異なる場合があるので、各能力評価実施団体のHPを事前に確認しましょう。
(申請書類)
●技能者登録画面の写し
●能力評価申請書兼キャリアアップカード交付申請書
●振込明細
●経歴証明書(経過的措置としてCCUS利用開始前の就業日数を算入する場合)
●個人情報利用同意書
(申請の流れ)

最後に
建設キャリアアップシステム(CCUS)の認知と登録・現場利用は徐々に広がりつつありますが、能力評価(レベル判定)の申請・判定はまだまだ進んでいない状況です。
レベルに応じた手当支給等の取り組みが、まだ大手ゼネコン等の一部の事業者でしかみられないので当然の結果かもしれません。
しかし、評価項目である就業日数の経過的措置の期限(2024年3月31日まで)もありますし、レベルアップ要件を満たしているのであれば、いまのうちに能力評価(レベル判定)申請を検討してみてはいかがでしょうか。
![]() | この記事の執筆者 逸見 龍二(へんみ りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、建設キャリアアップシステムをサポート。 事務所HPへ |
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