「指導監督的実務経験証明書(様式第十号)」は特定建設業許可の専任技術者に必要な指導監督的実務経験を証明するための書類です。
全国的に特定建設業の許可を取得する割合は少なく、中でも実務経験での申請・取得はさらに少ないので、あまり馴染みのない書類かもしれません。
一般建設業許可の「実務経験証明書(様式第九号)」同様に都道府県によって書き方のルールが違っていたり、添付する確認書類のルールが違っていたり、とっつきにくい書類の1つでもあります。
本記事では、大阪府におけるルールに基づいて「指導監督的実務経験証明書(様式第十号)」の書き方等を解説しています。ぜひご参考にしてください。
▼目次
(1)指導監督的実務経験とは?
5.最後に
指導監督的実務経験に関する基礎知識
実務経験で特定建設業許可の専任技術者になるには、一般建設業の専任技術者要件(資格または実務経験)を満たしていることに加えて2年以上の指導監督的な実務の経験が必要になります。
■ 指導監督的実務経験とは?
■ 指定建設業の場合は認められない
指導監督的実務経験に関する基礎知識を解説します。
◎指導監督的実務経験とは?
指導監督的実務経験とは具体的にどういった経験を指すのでしょうか。
以下、国交省のガイドラインです。
【建設業許可事務ガイドライン】
“① 「指導監督的な実務の経験」とは、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任者又は工事現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいう。 ”
“② 指導監督的な実務の経験については、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が4,500万円以上であるものに関し、2年以上の指導監督的な実務の経験が必要であるが、昭和59年10月1日前に請負代金の額が1,500万円以上4,500万円未満の建設工事に関して積まれた実務の経験及び昭和59年10月1日以降平成6年12月28日前に請負代金の額が3,000万円以上4,500万円未満の建設工事に関して積まれた実務の経験は、4,500万円以上の建設工事に関する実務の経験とみなして、当該2年以上の期間に算入することができる。”
「指導監督的な実務の経験」とは、
●元請として請け負った請負金額4,500万円以上の工事
●現場監督、施工管理、工事主任、現場代理人といった立場
●工事の技術面を総合的に指導監督した経験
ということになります。
◎指定建設業の場合は認められない
土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業は指定7業種とされています。
これらの業種の特定建設業許可では国家資格(1級相当)を持つ専任技術者しか認められません。
指導監督的な実務経験が2年以上あっても専任技術者の要件を満たすことはできません。
指導監督的実務経験証明書(様式第十号)は更新以外の申請で必要に応じて提出する
書類は大阪府HPの様式等ダウンロードページからダウンロードできます。
新規申請はもちろん、業種を追加するとき、業種担当を交代させるとき等、専任技術者として要件を満たしていることを証明しなければなりません。
「指導監督的実務経験証明書(様式第十号)」を提出する場面としては、新規申請よりも、既に何らかの許可を受けている建設業者による般特新規申請や業種追加申請の方が圧倒的に多いでしょう。
すでに一般建設業の専任技術者として登録されている人が自社で2年以上の指導監督的実務経験を積んだタイミングで特定建設業許可の申請をするというパターンです。
指導監督的実務経験証明書(様式第十号)の記載例・記載ルール
以下、記載例をもとに記載ルールを解説しています。
各都道府県によってルールが異なるので注意が必要です。
記載例は、現在勤めている会社(一般建設業許可あり)で指導監督的立場での内装仕上工事(請負金額4,500万円以上)を2年以上経験したことを証明するという内容です。
①証明者
実務経験の証明をしようとする期間、被証明者が在籍していた会社の代表者又は個人事業主を記載します。
上記の例では、現在在籍している会社の代表者になっていますが、過去に在籍していた会社での経験を証明する場合は、過去在籍していた会社の代表者を記載します。
とはいえ、過去在籍していた会社から、工事内容等の事実確認を含めて協力を得るのは難しいかもしれません。
②使用者の商号又は名称
実務経験を積んだ当時の商号又は名称を記載します。基本的には①証明者に記載した会社名や個人事業主名と同じになります。
異なる場合はその理由を書類の一番下の欄に記載します。証明者となる会社が倒産して当時の代表者と連絡がつかない場合等が該当します。
③請負代金の額
請負代金を税込で記載します。税込4,500万円以上が対象です。
④職名
証明したい工事内容における地位を記載します。現場代理人、工事主任等、指導監督的な立場が入ります。
⑤実務経験年数
始まりと終わりが月の途中であることが多いのでひと月分マイナスして計算しなければなりません。
上記の例で言うと、1行目の工事は平成24年3月から平成24年7月となっていますが、計算上は5カ月ではなく4カ月になります。
記載した全工事の年数を積み上げて、総合計2年以上になるように記載します。
工事内容の確認書類も各都道府県によって異なるので注意が必要
「指導監督的実務経験証明書(様式第十号)」に記載した工事ごとの請負契約書、注文書・請書等を裏付け書類として提示します。
工期や元請、指導監督的立場も証明しなければならないので、施工体系図や施工体制台帳等も必要になるでしょう。経験した工事が公共工事であれば、コリンズの工事カルテも証明書類になります。
また、記載した工事すべてについて確認書類が必要になることにも留意してください。
監理技術者証で証明できる場合、自治体によっては確認書類が不要です。
最後に
書類の作成自体はそれほど難しいものではありませんが、1件1件の工事内容の確認とその証明書類の収集にかなりの労力がかかります。
工事の内容(元請、請負金額4,500万円以上、業種)、工事での指導監督的立場が明確に証明できなければなりません。
できれば行政庁に事前相談をした上で、認めてもらえる経験を積み上げて「指導監督的実務経験証明書(様式第十号)」を仕上げていく方が良いでしょう。
この記事は行政書士が執筆・監修しています。 アールエム行政書士事務所/代表/金本 龍二(かねもと りゅうじ) 本記事は建設業に特化した事務所の行政書士が執筆・監修しています。 行政書士の詳しいプロフィールはこちら |
当事務所では、大阪府知事の建設業許可を中心に申請代理、その他経営事項審査や入札参加資格申請までサポート全般を承っております。建設キャリアアップシステムについても代行申請を全国対応で承っております。
ぜひお気軽にご相談ください。ご相談はお問合せフォームからお願いいたします。
Comments