建設業許可において、許可要件をすべて満たしていても、経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者の常勤性で引っかかることがあります。
どれだけ経営経験があっても、どれだけ実務経験があっても、許可を受けようとする会社に常勤していなければ、許可は下りません。
許可を取った後も常勤性を欠くようなことがないよう注意が必要です。
本記事では、常勤の定義や確認書類について詳しく解説しています。
ぜひご参考いただければと思います。
▼目次
(2)個人事業主の場合
(3)個人事業の専従者の場合
(4)個人事業の従業員の場合
4.最後に
常勤とはどのような状況を指すのか
常勤とは一般的にフルタイムで働く労働形態のことをいいます。
いわゆる正社員をイメージしてもらえれば問題ありません。
たとえ正社員であっても建設業許可においては、基準を満たしていなければ以下に該当する場合は「常勤している」とは認められません。
✅自宅が遠く、常識的に考えて通勤が不可能である。
✅他の会社で経営管理責任者や専任技術者になっていたり、他の営業所で専任技術者になっている。
✅他の会社、営業所に建築士や宅建士として専任している。
✅他の会社の常勤の役員になっている。
✅給料が低すぎる(目安:月額10万円未満)※役員は除く
常勤性が求められるのは経営業務の管理責任者と専任技術者と令3条使用人
経営業務の管理責任者は本店(主たる営業所)に、専任技術者は各営業所に、令3条使用人(支店長等)は支店に常勤していることが求められます。
それぞれ建設業許可事務ガイドラインで規定されています。
●経営業務の管理責任者
“ 「役員のうち常勤であるもの」とは、原則として本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事(テレワークを行う場合を含む。)している者がこれに該当する。なお、建築士事務所を管理する建築士、宅地建物取引業者の専任の宅地建物取引士等の他の法令で専任を要するものと重複する者は、専任を要する営業体及び場所が同一である場合を除き「常勤であるもの」には該当しない。 ” (国土交通省:建設業許可事務ガイドライン【第7条関係】1(1)②)
●専任技術者
“「専任」の者とは、その営業所に常勤(テレワークを行う場合を含む。)して専らその職務に従事することを要する者をいう。会社の社員の場合には、その者の勤務状況、給与の支払状況、その者に対する人事権の状況等により「専任」か否かの判断を行い、これらの判断基準により専任性が認められる場合には、いわゆる出向社員であっても専任技術者として取り扱う。”(国土交通省:建設業許可事務ガイドライン【第7条関係】2(1))
●令3条使用人
“「建設業法施行令第3条に規定する使用人」とは、建設工事の請負契約の締結及びその履行に当たって、一定の権限を有すると判断される者、すなわち支配人及び支店又は営業所(主たる営業所を除く。)の代表者である者が該当する。これらの者は、当該営業所において締結される請負契約について総合的に管理することや、原則として、当該営業所において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事(テレワーク(営業所等の勤務を要する場所以外の場所で、ICTの活用により、営業所等で職務に従事している場合と同等の職務を遂行でき、かつ、当該所定の時間中において常時連絡を取ることが可能な環境下においてその職務に従事することをいう。以下同じ。)を行う場合を含む。)していることが求められる。”
(国土交通省:建設業許可事務ガイドライン【第5条及び第6条関係】2(12))
【参考】直接的、恒常的雇用関係を求められるのは主任技術者、監理技術者
建設業許可を取ると、現場に主任技術者または監理技術者を配置する義務が出てきます。
主任技術者、監理技術者は直接的かつ恒常的な雇用関係が求められます。
出向者や派遣社員、入社間もない社員等は認められません。
公共工事では入札の申込3ヶ月以上前から雇用関係がなければなりません。
経営業務の管理責任者や専任技術者は、常勤でさえあれば、出向者であっても入社間もない社員であっても認められます。
混同しないように注意しましょう。
【参考】経営事項審査における技術職員は恒常的雇用関係、常時雇用が求められる
経営事項審査で加点対象となる技術職員を申請するには、恒常的雇用関係にあることかつ常時雇用であることを証明しなければなりません。
具体的には審査基準日(≒決算日)以前6ヶ月を超える、期間の定めのない雇用関係が必要です。
主任技術者、監理技術者のように直接的な雇用関係である必要はありません。
出向者であっても資格要件、恒常的雇用関係、常時雇用が証明できれば、技術職員として申請できます。
常勤性を確認する書類
建設業許可申請の際、どのような書類を提示して常勤性を証明するのでしょうか。
置かれている立場や年齢によっていくつかのパターンがあります。
経営業務の管理責任者は新規申請だけでなく、あらゆる場面で常勤性の証明が必要になります。
なお、業種追加・般特新規の際、既存の専任技術者は常勤性の証明が不要です。
◎法人の役員又は従業員の場合
以下のいずれかが必要です。
▶「健康保険被保険者証」+「健康保険被保険者標準決定通知書」(直近のもの)
▶「住民税特別徴収税額通知書(会社用・本人用)」(直近のもの)
※保険証に事業所名のない建設国保等の場合は、加入証明書も必要です。
※75歳以上の後期高齢者医療制度被保険者は被保険者証に会社名の記載がないので、「住民税特別徴収税額通知書(会社用・本人用)」で証明します。
※「住民税特別徴収額通知書(会社用・本人用)」は再発行できません。紛失した場合は、「仮通知書」と「住民税課税証明書」で代用します。
※出向者は「出向協定書」と「出向辞令」が別途必要です。
※居所から営業所まで、通勤に1時間半以上かかると思われる場合は追加の確認資料が必要です。
(6カ月以上分の定期券など)
※住民票住所と実際の居所が異なる場合は追加の確認資料が必要です。
(公共料金の領収書、居所の賃貸借契約書など)
※以前は住民票の提出が必要でしたが、2020年の法改正で不要になりました。
◎個人事業主の場合
▶「国民健康保険被保険者証」
※75歳以上の後期高齢者医療制度被保険者は「確定申告書類(直近のもの)」+「住民税課税証明書(直近のもの)」で証明します。
◎個人事業の専従者の場合
▶「国民健康保険被保険者証」+「確定申告書類(直近のもの)」
※75歳以上の後期高齢者医療制度被保険者は「確定申告書類(直近のもの)」+「住民税課税証明書(直近のもの)」で証明します。
◎個人事業の従業員の場合
以下のいずれかが必要です。
▶「健康保険被保険者証」+「健康保険被保険者標準決定通知書」(直近のもの)
▶「住民税特別徴収税額通知書(会社用・本人用)」(直近のもの)
※75歳以上の後期高齢者医療制度被保険者は「住民税特別徴収税額通知書(会社用・本人用)」または「確定申告書類(直近のもの)」+「住民税課税証明書(直近のもの)」で証明します。
最後に
常勤性は経営業務の管理責任者や専任技術者といった主要人物に求められる重要な要件です。
許可を取った後に、経営業務の管理責任者や専任技術者が他社で常勤の役員になり、実質的に常勤でなくなり、許可取り消し処分を受ける事例がたまに見られます。
少なくとも更新時には常勤性の確認がありますし、確認書類は上記のとおり公的な書類ですので、抜け道のようなものもありません。
常勤の定義を理解し、雇用関係には十分注意しておきましょう。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。 ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、建設キャリアアップシステムをサポート。 |
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