「建設業許可を取得するには何か資格が必要ですか?」よくこのようなご質問をお受けします。
建設業許可を取得するには、経営能力、技術力、財産的基礎、適格性などが求められます。資格の要否は、この中の「技術力(=専任技術者)」に関わる話です。
施工管理技士等の国家資格があれば比較的容易に許可を取得できるのは事実ですが、必ずしも資格が必要というわけではありません。一部業種を除きますが、資格がなくても一定の実務経験があれば許可を取得することは十分に可能です。
この記事を読むと、専任技術者になるために必要な資格や必要な実務経験、その他求められることがすべてわかります。
ぜひご参考にしていただければと思います。
▼目次
(2)実務経験の証明は難しい
6.最後に
許可要件の中での位置づけ
建設業許可の要件はすべてが重要で、どれか1つでも欠けると許可を取得することができません。
その中でも専任技術者は、請け負うことができる業種や許可の区分(一般・特定)に直結する要件なのでとりわけ重要です。経営業務の管理責任者同様にヒトに関する要件なので、退職等で欠いてしまうリスクが常にあるので注意が必要です。
◎専任技術者は技術力を表す重要な許可要件
行政の許認可でヒト・モノ・カネの要件が求められることが多いですが、特に建設業許可は、ヒトに関する経験や資格がより厳格に求められます。許可取得が難しいと言われる所以です。
●技術力があること 許可を受けようとする業種の建設工事の施工に関する一定の資格または実務経験を有する技術者で、専任の者(専任技術者)を営業所ごとに置かなければなりません。 専任技術者とは営業所において見積作成や契約締結、注文者との施工に関する技術的なやりとりなどを行う役割を担っていて、建設業を営む上での要と言えるでしょう。 ※専任技術者は許可業種ごとに配置が必要です。1人で複数業種の専任技術者になることも可能です。 ※1つの業種を2人以上の専任技術者が担当することはできません。 |
●経営能力があること
「経営業務の管理を適正に行う能力」の裏付けとして、建設業に関して一定の経営経験がある常勤役員等(経営管理責任者)を置かなければなりません。また、事業所として適切に社会保険に加入している必要があります。
●財産的基礎・金銭的信用があること
請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有していることが求められます。
●欠格要件に該当しないこと、誠実性があること
法人の役員等すべてと個人その本人、支配人が、欠格要件に該当していると絶対に許可を取得することはできません。
申請書に虚偽記載があったり、重要なことを記載しなかったり、禁固以上の刑を受けて5年経過していない等、定められた欠格要件に1つでも該当してはなりません。
また、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがある場合も許可されません。
●営業所を有していること
建設業の営業を行う事務所を主たる営業所として設置しなければなりません。
常時使用する権限や固定電話、事務機器等設備が必要となります。
資格があれば専任技術者になることができる
実務経験を証明するよりも資格を持っていることを証明する方が簡単であることは言うまでもありません。
許可を取得したい業種の専任技術者になり得る国家資格等を持っていれば、合格証書等を提示するだけで要件を満たすものとして認められます。例外的に、資格取得後の実務経験もあわせて求められる資格もあります。
◎専任技術者になり得る国家資格等の一覧
該当する資格を保有していれば、その業種の専任技術者になり得ます。
特定建設業の専任技術者になるには、基本的に1級レベルの国家資格等が必要になります。
〈国土交通省HPから引用〉
資格がなくても実務経験で専任技術者になれる
資格がなくても、許可を取りたい業種の実務経験が10年以上あれば、技術力があるものとして認めてもらうことができます。
業種に応じた指定学科を大学で修了した人は実務経験を3年に、高校で修了した人は実務経験を5年に短縮できます。
どこまでが実務経験として認められるかというと、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験が対象となります。
ただし、単に建設工事の雑務のみ行っていた場合は経験として認められません。設計技術者や現場監督や土工及びその見習いの経験等は認められます。
※「電気工事業」と「消防施設工事業」においては、資格のない職務は実務経験として認められない可能性があります。
◎特定建設業は特別な実務経験も求められる
実務経験が10年以上あっても特定建設業の専任技術者になることはできません。指導監督的実務経験も2年以上なければ認められません。
指導監督的実務経験とは元請として請け負った請負代金4,500万円以上の工事において現場監督のような立場での実務経験を指します。
もちろん、一般建設業の専任技術者になり得る資格を保有する者が、指導監督的実務経験を2年以上持っている場合も特定建設業の専任技術者になることができます。
指定建設業(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業)の場合は指導監督的実務経験があっても認められません。
該当する国家資格等(1級レベル)がなければ、特定建設業の専任技術者になることはできません。
◎実務経験の証明は難しい
専任技術者の要件を実務経験で証明する場合、客観的に経験を証明できる確認書類を準備しなければなりません。
以下の各書類で実務の経験とその期間在籍していたことを証明しなければなりません。
実務経験確認
・工事の契約書、注文書・請書、請求書・入金履歴のいずれか
※契約書等に記載されている工事内容から許可を受けようとする業種であることが判別できなければなりません。
※大阪府の場合、工事と工事の間が12ヵ月以上空いていなければ、連続した経験期間として認められます。各自治体によって判断が異なります。
>許可業者での経験の場合
・決算変更届の表紙+工事経歴書(経験年数分)
※許可業者で専任技術者として就任していた場合は建設業許可申請書の表紙と実務経験証明書(様式第9号)があれば、証明できます。
在籍確認
・被保険者記録照会回答票、雇用保険被保険者証、雇用保険被保険者離職票のいずれか、個人の場合は所得税確定申告書類
被保険者記録照会回答票はマイナンバーカードがあれば、「ねんきんネット」で簡単に出力できます。
専任技術者は営業所ごとに専任で常勤していることが求められる
専任技術者はその名前のとおり専任でなければなりません。
専任とは、所属する営業所に常勤し、専らその職務に従事することをいいます。
会社と恒常的な雇用関係にあり、原則、勤務時間中はその営業所に勤務していることが求められます。
営業所と住居が常識的に通勤困難なほど離れていたり、他の営業所等に専任しなければならない立場であったりする場合等は専任とは認められません。
申請時には、資格や実務経験を証明するのと同時に、営業所に専任・常勤していることを証明しなければなりません。
常勤性については、以下のリンク記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
最後に
建設業を営む上で専任技術者は、経営業務の管理責任者と並び重要な存在なので、許可申請時に厳しいチェックが行われます。
常勤性は、許可取得後も更新、経営事項審査の場面において都度チェックされることになります。
また、資格がなくて実務経験で証明しなければならない場合、実務経験はあるものの、それを証明できずに許可取得を断念するということがよくあります。
実務経験の証明書類を揃えることができるか不安な場合は、ぜひ事前に専門家に相談することをご検討ください。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、建設キャリアアップシステムをサポート。 |
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