Ryuji Kanemoto
個人事業主・一人親方が許可を取るときの注意点【建設業許可大阪】
更新日:11月11日

法人でなければ建設業許可を取得できないと思っている方が意外と多くいらっしゃいます。
そんなことはなく、個人(個人事業主・一人親方)でも許可要件さえ満たせば、問題なく建設業許可を取得できます。
実際に全国で475,293者存在する建設業許可業者の内、約15%にあたる70,920者が個人(個人事業主・一人親方)となっています(2022年3月時点)。
法人には、社会的信用や有限責任、節税効果等大きなメリットがある一方で、赤字でも税金がかかることや社会保険への加入義務、会計・税務事務負担等デメリットも少なからずあります。
法人成りせずに個人(個人事業主・一人親方)のまま建設業許可を取得するという選択も当然にあり得るでしょう。
この記事を読むと、建設業許可を個人で取得するメリット・デメリット、要件、注意点がわかります。
ぜひご参考にしていただければと思います。

▼目次
(1)個人・法人関係なく、そもそも建設業許可を取得するメリットは大きい
(2)個人(個人事業主・一人親方)のまま、建設業許可を取得する場合のメリット
(3)個人(個人事業主・一人親方)のまま、建設業許可を取得する場合のデメリット
(1)経営能力があること
(2)技術力があること
(3)財産的基礎があること
(5)営業所を有していること
(1)主任技術者の配置義務
(2)建設業許可の承継
4.最後に
個人でも建設業許可を取得する場合のメリット・デメリット
個人(個人事業主・一人親方)のまま建設業許可を取得する場合、法人と比べてコスト(金銭的・労力的)を削減できます。その反面、信用度の差で受注機会を得られないこともありえます。
◎個人・法人関係なく、そもそも建設業許可を取得するメリットは大きい
建設業許可を取得することによる一般的なメリットは以下の3つです。
個人・法人に関係なく、建設業許可業者である以上、得られるメリットです。
✅取引先や金融機関等に対する信用度が上がる。
✅請負金額500万円未満という制限がなくなり、大規模な工事を受注できるようになる。
✅公共工事の入札参加が可能になる。(別途、手続きは必要)
建設業許可を受けて建設業者になることで「行政庁への決算報告」「現場への主任技術者配置」「重大な変更があった場合の届出」など課せられる義務も出てきますが、得られるメリットを考えると大きな負担とまでは言えないでしょう。
◎個人(個人事業主・一人親方)のまま、建設業許可を取得する場合のメリット
法人成りして建設業許可を取得する場合と比べると、以下のようなメリットがあります。
✅法人設立にかかる手続き・コストが必要ない。
✅従業員が5人未満であれば、社会保険の加入義務がなく、保険料負担がない。
✅許可申請時に必要な書類が少なくて済む。
◎個人(個人事業主・一人親方)のまま、建設業許可を取得する場合のデメリット
法人成りして建設業許可を取得する場合と比べると、以下のようなデメリットがあります。
✅個人(個人事業主・一人親方)との取引を制限している元請が多いので、せっかく建設業許可を受けていても受注機会を逃す可能性がある。
個人が建設業許可を取得するための要件
建設業許可を取得するためには大きく5つの要件を満たす必要があります。
個人(個人事業主・一人親方)の場合、基本的にその個人本人が経験等を証明することになります。
◎経営能力があること
●常勤役員等(経営業務管理責任者)
個人(個人事業主・一人親方)その者に建設業での経営経験が5年以上必要です。
支配人を経営業務の管理責任者としてたてるパターンも可能ですが、商業登記されていなければなりません。
支配人とは、「個人その者に代わって、営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有する使用人」とされています。
(代替わりして、個人事業主となった息子に経営経験年数が足りず、経営経験のある父親を支配人として登記するというようなケース等が考えられます。)
●社会保険への適切な加入
法律上加入義務のある保険に正しく加入していることが求められます。適用除外の場合は除きます。
健康保険・厚生年金保険・・・家族従業員を除く従業員が5人以上の場合は加入義務あり。
雇用保険・・・1人でも従業員を雇用していれば加入義務あり。
◎技術力があること
●専任技術者
許可を取得しようとする業種に応じた国家資格等を保有している人か、実務経験が10年以上ある人を営業所ごとに専任の技術者として配置しなければなりません。
経営業務の管理責任者と専任技術者を兼任することは可能なので、個人の場合、その本人(個人事業主・一人親方)が兼任するケースが多くなります。
◎財産的基礎があること
>一般建設業許可の場合
直前の決算で純資産合計が500万円以上あることが求められます。
なければ、500万円以上の預金残高で金銭的信用があることを証明しなければなりません。
新規設立の個人の場合は500万円以上の預金残高が必要となります。
残高証明書は証明日付(発行日ではない)が申請日前4週間以内のものでなければなりません。
>特定建設業許可の場合
直前の決算期の財務諸表において以下のすべてをクリアしていることが求められます。
✅欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
✅流動比率が75%以上であること。
✅資本金の額が2,000万円以上であること。
✅自己資本の額が4,000万円以上であること。
◎欠格要件に該当していないこと、誠実性があること
個人その者、支配人が以下の欠格要件に該当していると、許可されません。
〈許可制度の本質から当然に要求されること〉
✅申請書類や添付書類の中の重要な事項について、虚偽の記載もしくは欠落があるとき
〈個人事業主、支配人の欠格事由〉
✅破産者で復権を得ない者
✅建設業許可の取消を受けて5年を経過しない者
✅監督処分による許可取消を免れるために廃業届を提出してから5年を経過しない者
✅営業停止処分を受け、その停止期間が経過しない者
✅禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、または執行猶予期間が満了してから5年を経過しない者
✅一定の法令の規定に違反して罰金以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、または執行猶予期間が満了してから5年を経過しない者
✅暴力団員等に事業活動を支配されている者
✅暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
✅精神の機能の障害により建設業を適正に営む事ができない者
◎営業所を有していること
建設業の営業を行う事務所(=建設工事に係る請負契約を締結するなど、見積り、入札、契約締結に係る実体的な行為を行う事務所)を主たる営業所として設ける必要があります。
従たる営業所(支店)を設ける場合は、その営業所に支店長や専任技術者を配置しなければなりません。
従たる営業所(支店)が主たる営業所と異なる都道府県にある場合は、国土交通大臣の許可になるのでご注意ください。
営業所の要件は以下のとおりです。
✅営業所として常時使用する権限を有していること。
✅建物の外観または入口で、商号または名称が確認できること。
✅固定電話、事務機器、机等什器備品を備えていること。
✅許可取得後は、建設業の許可票を掲示していること。
✅経営業務の管理責任者(従たる営業所は支店長等)、専任技術者が常勤して専らその職務に従事していること。
個人で建設業許可を取得する場合の注意点
個人で建設業許可を取得する場合は、特に取得後の現場施工体制と許可業者としての地位の扱いについては意識しておいた方が良いでしょう。
◎主任技術者の配置義務
建設業許可業者には、個人・法人関係なく、工事現場に主任技術者(営業所の専任技術者と同等の資格要件)を配置しなければならない義務があります。
営業所の専任技術者は営業所に常勤・専任することが求められるので、主任技術者を兼務することが禁じられています。
しかし、以下の条件をすべて満たす場合のみ特例で専任技術者が兼務することが認められます。
✅主任技術者を「専任」する必要のない工事であること
※請負金額4,000万円未満(建築一式工事の場合は8,000万円未満)
✅営業所と現場の距離が近く、常時連絡が取れる体制にあること
✅専任する営業所で契約締結された建設工事であること
✅建設工事を行う事業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること
一人親方のように従業員のいない個人の場合、その本人が経営業務の管理責任者であり、専任技術者であるので、特例条件のもと、本人が現場に出て主任技術者を兼務することになります。
個人の場合は工事規模と営業所・現場間の距離に注意しておきましょう。
決算変更届(決算報告)の際に行政庁に提出する工事経歴書でチェックされます。
制限を超える請負金額の工事や遠方の工事を請け負った場合は、建設業法に違反することになるので、十分注意してください。
主任技術者については別記事で詳しく解説しています。ご参考にしていた だければと思います。
【建設業許可を取った後】配置技術者とは?|配置義務や職務について徹底解説!
◎建設業許可の承継
個人で建設業許可を取得するということは、あくまでもその個人に許可が与えられている状態です。
ですので、原則、その個人が死亡した場合や法人成りした場合は、建設業許可業者としての地位はなくなることになります。
しかし、死亡の場合は相続人が「死後30日以内」に、法人成りの場合は「事前に」認可申請をすれば、建設業許可業者としての地位を空白期間なく引き継ぐことができます。
当然、生前に事業譲渡する場合も事前の認可申請で地位承継が可能です。
認可手続きは煩雑ですが、スムーズに行わないと建設業許可の空白期間が生じることになるので注意が必要です。
最後に
建設業許可は個人で取得する場合でも、法人に比べて許可要件を満たしにくいといったことはありません。
法人設立にかかる手続き・費用や社会保険料といったコストが大きなデメリットと感じるのであれば、個人のまま許可を取得する方が良いかもしれません。
ある程度のコストは許容した上で、長期的な視点で対外的な信用と売上向上、節税効果等を狙っていくのであれば、先に法人成りして許可を取得する方が良いでしょう。
もちろん、先に個人で許可を取得して、後に法人成りして許可を引き継ぐというパターンもありでしょう。
事業の計画に応じて慎重に検討することをおすすめします。
![]() | この記事は行政書士が執筆・監修しています。 アールエム行政書士事務所/代表/金本 龍二(かねもと りゅうじ) 本記事は建設業に特化した事務所の行政書士が執筆・監修しています。 行政書士の詳しいプロフィールはこちら |
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