資金500万円がなくても大丈夫!財産要件をクリアして建設業許可を取る方法
- Ryuji Hemmi

- 10月1日
- 読了時間: 6分

建設業許可の取得を目指しているときに、よく耳にするのが「500万円以上の資金が必要」という要件です。
しかし実際には、500万円の資金を必ず持っていなければならないわけではありません。
資金が不足していても融資・残高証明書をうまく活用すれば、許可を取得できるケースがあります。
この記事では、建設業許可における財産要件の内容、証明方法、資金が足りない場合の対処法、そしてよくある間違いまで詳しく解説します。
💡この記事のポイント ・新規許可では「貸借対照表」または「銀行残高証明」で証明が必要。 ・手元資金として500万円がなくても対処方法はある。 ・資本金額ではなく「純資産(自己資本)」が基準。 ・更新申請では証明不要。 |

▼目次
6.最後に

建設業許可の財産要件とは?
建設業許可を取得するには「財産的基礎または金銭的信用」を備えていることが必要です。
建設工事には資材費や人件費など、まとまった運転資金が必要です。
資金不足によって工事が中断すると、発注者に損害が及ぶ可能性があるため、この要件が設けられています。
“建設業法第7条(許可の基準) 四 請負契約(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。” 〈建設業法より抜粋〉 |
具体的には次のいずれかを満たせばクリアできます。
・自己資本が500万円以上ある(財産的基礎)
・500万円以上の資金調達能力がある(金銭的信用)
したがって「500万円を現預金で持っていなければ許可が取れない」というのは誤解です。
証明方法(証明書類の具体例)
財産要件を満たしていることを証明するためには、状況に応じて次のような書類が必要です。
📍自己資本500万円以上(財産的基礎)の証明


新規設立の場合は、上記のような貸借対照表を作成し、資本金が500万円以上であることを示します。
法人は「法人設立届出書(都道府県税)の控」、個人は「金融機関の残高証明書」が裏付け資料として必要です。

決算を1期でも迎えている場合は、直近決算の貸借対照表で自己資本が500万円以上であることを示します。
法人は「法人税申告書 別表1」、個人は「所得税申告書 第1表・第2表」「青色申告決算書(または収支内訳書)」が裏付け資料として必要です。
個人の自己資本は、「元入金+所得金額+事業主借ー事業主貸」で計算します。
📍500万円以上の資金調達能力(金銭的信用)の証明

金融機関に残高証明、融資証明をしてもらうことで500万円以上の資金調達能力があることを示します。
⚠️残高証明書は「証明日現在」から28日間しか証明書類として認められません。
⚠️同一の証明日であれば、複数の金融機関の残高証明金額を合算することができます。
500万円以上ない場合の対処方法(資金調達能力の証明)
「自己資本500万円がない」、「現預金500万円がない」としても資金調達能力を証明できれば、問題ありません。
資金調達能力を認められる方法
・証明日における金融機関残高が500万円以上あることを残高証明で示す
・金融機関から500万円以上の融資を認められ、融資証明書を取得できる
〈実際の調達方法の例〉
■ 日本政策金融公庫からの融資
■ 銀行のプロパー融資
■ 信用保証協会保証付き融資
■ 知人、親族からの借入
■ カードローンによる資金調達
「融資証明書」を得るのは難しいため、まずは合法的に500万円を調達し、残高証明書で証明するのが現実的です。
※一時的に借り入れた資金(いわゆる「見せ金」)でも形式的には認められます。ただし、事業を健全に続けるためには実際の運転資金が必要である点を忘れてはいけません。
特定建設業許可の場合の追加要件
特定建設業は一般建設業よりも厳しい要件が課されます。
“建設業法第15条(許可の基準) 三 発注者との間の請負金額で、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有すること。” 〈建設業法より抜粋〉 |
条文を見ると一般建設業とは要件が大きく異なります。
「金銭的信用」という表現がなくなり、資金調達能力では認められないことがわかります。
このため、いきなり特定建設業を目指すのではなく、まず一般許可を取得してから切り替えるケースが一般的です。
具体的な要件は以下のとおりです。
・流動比率が75%以上であること
→流動比率=流動資産/流動負債
・資本金の額が2,000万円以上であること
→直近の決算で資本金が2,000万円以上
※期中に増資をした場合でも履歴事項全部証明書で確認できれば認められます。
・自己資本の額が4,000万円以上であること
・欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
→繰越利益剰余金がマイナスで、資本剰余金・利益準備金・その他利益剰余金の合計額を超えた場合の、その超過した額が欠損です。
よくある間違いと注意点
・資本金と自己資本を混同しないように注意
建設業許可の財産要件で基準となるのは「資本金」ではなく「自己資本」です。
資本金が少なくても、事業を継続して利益を積み重ねれば、利益剰余金(内部留保)が増えていき、結果として自己資本は大きくなります。
そのため、資本金が500万円に満たなくても、直近の決算で自己資本が500万円を超え、要件を満たすことは十分にあり得ます。
・残高証明書の有効期間は28日
金融機関の残高証明書の有効期間は「発行日」ではなく「証明日(残高を確認した日)」から28日間とされています。
発行手続きに1~2週間かかることもあるため、その分も見込んで申請準備をしておかなければなりません。
期限切れで使えなくならないよう注意しましょう。
・追加申請のときは再度の証明が必要
新規で建設業許可を取得してから5年以内に業種追加や般特新規(一般から特定への変更)の申請をする場合は、財産要件をあらためて証明しなければなりません。
一方で、更新申請の際には財産要件の証明は不要です。
5年間事業を継続してきたということで財産要件を満たしているものとみなされます。
最後に
建設業許可の取得に「500万円の現預金が必要」というのは誤解です。
資金調達能力を示せれば、十分に許可取得が可能です。
ただし、書類の整備や証明方法には細かいルールがあり、不備があると申請が差し戻されるリスクもあります。
確実に許可を取りたい方は、建設業許可に詳しい専門家へご相談ください。
![]() | この記事の執筆者 逸見 龍二(へんみ りゅうじ) アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、建設業専門の行政書士事務所を開設。 知事許可・大臣許可ともに特殊案件含め実績多数。経営事項審査も年商数千万円の企業から40億円規模の企業まで幅広く対応。入札参加資格審査申請は全国自治体で申請実績あり。事務所HP |
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