建設業許可を取得するためには、許可要件をすべて満たす必要があります。
われわれ行政書士の立場からすると、経営業務の管理責任者と専任技術者という2つの要件を満たせているのかどうか、その証明資料を揃えることができるのかどうか、これが真っ先に気になる点です。
しかし、建設業を営んでいる方にとっては、500万円以上の資金力という財産要件を満たせるのかどうかも大きな気がかりです。
500万円をすぐに準備するのが難しいというご意見もよくうかがいます。
そのような場合は、どう対処すべきでしょうか。
この記事では、財産要件の内容・対処方法について詳しく解説しています。
これから建設業許可の取得を考えている方は、ぜひご参考にしていただければと思います。
財産的基礎・金銭的信用とは?
他の許認可では明確な財産要件自体がないものも多くあります。
例えば、風俗営業許可でもありませんし、産業廃棄物収集運搬業許可でも明確な財産水準はありません。
しかし、建設業は発注者から下請まで重層構造が当たり前の業界なので、その中に最低ラインの運転資金がない業者を算入させるとリスクが高まってしまいます。
◎なぜ財産的基礎等が求められるのか
建設工事を遂行するには建築資材の購入や労働者の雇用、設備・重機の購入等のために一定の運転資金を確保しなければなりません。
運転資金が確保できていれば、経営が安定し、結果的に発注者保護にもつながります。
そのために財産的基礎等要件等が設けられています。
特定建設業許可の場合は、より厳しい財産的基礎要件が設けられています。これは、下請け保護までを考えてのことです。
◎自己資本(純資産合計)が500万円以上あること・・・財産的基礎
法人の場合:貸借対照表における自己資本(純資産合計)の額
個人の場合:期首資本金+事業主借+事業主利益-事業主貸の額
◎500万円以上の資金調達能力があること・・・金銭的信用
自己資本(純資産合計)が500万円に満たない場合は、500万円以上の資金調達能力が必要です。
財産的基礎等要件はどのように証明するのか
許可申請の必要書類とともに財産の状況に応じた証明書類を提示または提出します。
◎自己資本(純資産合計)が500万円以上あること
新規設立の法人の場合は、創業時の貸借対照表で自己資本500万円以上あることを証明します。
創業時は自己資本=資本金なので、資本金500万円以上ということです。
既存の法人・法人の場合は、直前の決算期の貸借対照表で証明します。
新規創業の個人の場合は預金の準備が必ず必要になります。
◎500万円以上の資金調達能力があること
金融機関が発行する残高証明書で500万円以上の預金があることを証明します。
残高証明日付が建設業許可申請日前4週間(28日)以内のものでなければなりません。
同一の証明日付であれば、複数金融機関の合計額でも問題ありません。
◎建設業許可更新の際は証明不要(一般建設業許可)
更新を迎えるまで5年間営業をしてきたことにより、財産要件が備わっているものとみなされます。
どのように資金を調達するか(500万円ない場合の対処方法)
法人で設立時に資本金500万円以上を払込しているような場合は比較的容易に証明できることが多いですが、個人の場合は、銀行預金で500万円を準備しなければならないパターンが多くなります。
どのように調達するかで頭を悩ませる方も多いのですが、方法は簡単です。
◎見せ金でも全く問題ない
これは一般建設業に限ったことですが、一時的に借りた見せかけのお金、いわゆる見せ金でも全く問題ありません。
許可申請時にさえ準備できれば、そのあと500万円がなくても大丈夫ということです。
資金調達能力があるという証明になります。
(ただし、健全な経営をするためにも運転資金は必要です。あくまでも許可取得に限った話です。)
◎資金調達手段
見せ金でも問題ないということであれば、いろいろと調達手段を考えることができます。
とはいえ、建設業許可取得後の運転資金のことも考えて、日本政策金融公庫や銀行から低金利で融資を受けるのが望ましいと言えるでしょう。
✅日本政策金融公庫から融資を受ける
✅銀行のプロパー融資を受ける
✅銀行の信用保証協会の保証付き融資を受ける
✅カードローンで融資を受ける
✅知人や親族から一時的に借りる
特定建設業許可の場合は要件が厳しくなる
新規許可のタイミングで特定建設業の申請をするケースはほとんどありません。
一般建設業許可を持っている会社が般特新規という申請を行うことで特定に切り替えるパターンがほとんどです。
自己資本500万円以上あるだけでは要件を満たすことができません。
◎欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
欠損の額とは、以下のとおりです。
法人の場合:マイナスとなる繰越利益剰余金が、資本剰余金、利益準備金およびその他利益剰余金の合計額を上回る額
個人の場合:事業主損失が、事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金および準備金を加えた額を上回る額
◎流動比率が75%以上であること
流動比率とは、以下のとおりです。
流動資産/流動負債×100
◎資本金の額が2,000万円以上であること
直近の決算期の貸借対照表で2,000万円以上計上されていなければなりません。
◎自己資本(純資産合計)の額が4,000万円以上であること
法人の場合:自己資本(純資産合計)の額
個人の場合:期首資本金+事業主借+事業主利益-事業主貸の額
直近の決算期の貸借対照表で4,000万円以上計上されていなければなりません。
最後に
「準備した500万円をどこかに振り込まなければならない」「見せ金ではまずい」というような勘違いをされている方をよくお見かけします。
建設業法で財産的基礎(自己資本)または金銭的信用(資金調達能力)が必要であると規定されているのです。
要するに、手段は問わず、500万円を調達できるということを証明すれば良いだけで、500万円を振り込む必要もないのです。
この発想に立つだけでも建設業許可取得に向けて幅が広がるのではないでしょうか。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、建設キャリアアップシステムをサポート。 |
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