世間では、飲食店や病院、薬局等、無許可で営業できない業種がたくさんあります。
建設業も例外ではないのですが、やや特殊で、無許可営業が全面的に禁止されているわけではありません。限られた軽微な工事のみを請け負って営業するのであれば、無許可で建設業を営業しても良いとされています。無許可にもかかわらず、軽微な工事に該当しない工事を請け負った場合は、いわゆる無許可営業ということになります。
そして行政処分・罰則の対象となってしまいます。
この記事を読むと、建設業の無許可の概念や処分・罰則規定がどの程度のものなのかがわかります。
ぜひご参考にしていただければと思います。
▼目次
(2)決算変更届を提出する
(1)共通的な規定
(1)標識を掲示する義務
5.最後に
建設業の許可がなければ軽微な工事しか請け負えない
軽微な工事とは、請負金額が税込500万円未満の工事(建築一式工事の場合は税込1,500万円未満の工事または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事)のことをいい、建設業許可を受けていない無許可の状態でも例外的に請け負うことができる工事です。
請負代金が税込500万円以上になると無許可では請け負うことができません。注文者から資材の提供があった場合はその代金も含めて考えます。
(建設業の許可)
第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。 (引用:e-Gov法令検索)
特定建設業の許可がなければ4,500万円以上の下請契約を締結できない
特定建設業とは、元請として税込4,500万円以上(建築一式工事の場合は税込7,000万円以上)の下請契約ができる許可の区分です。
無許可で請負金額税込500万円以上の工事を請け負うことができないのと同じように特定建設業の許可がなければ、税込4,500万円以上(建築一式工事の場合は税込7,000万円以上)の下請契約を締結することができません。
(下請契約の締結の制限)
第十六条 特定建設業の許可を受けた者でなければ、その者が発注者から直接請け負った建設工事を施工するための次の各号の一に該当する下請契約を締結してはならない。
一 その下請契約に係る下請代金の額が、一件で、第三条第一項第二号の政令で定める金額以上である下請契約
二 その下請契約を締結することにより、その下請契約及びすでに締結された当該建設工事を施工するための他のすべての下請契約に係る下請代金の額の総額が、第三条第一項第二号の政令で定める金額以上となる下請契約
(引用:e-Gov法令検索)
建設業法の一部の規定は無許可業者にも適用される
建設業法は許可業者だけを対象にしたものではなく、無許可業者も含めた建設業を営むすべての業者を対象にした規定もあるという前提を理解しておきましょう。主なものを5つあげておきます。
■指示処分及び営業停止処分
■利害関係人による申告と措置請求
■報告徴収と立ち入り検査
■公正な請負契約の締結義務と書面記載・署名による相互交付義務
■建設工事紛争審査会による紛争解決
◎指示処分及び営業停止処分
請け負った工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼした場合や請負契約に関して著しく不誠実な行為があった場合は、工事が行われている区域を管轄する都道府県知事が指示処分または営業停止処分を行うこととされています。500万円以上の工事を無許可で請け負うことは、請負契約に関する不誠実な行為に該当します。
手抜き工事等で工事目的物に重大な瑕疵を生じさせた場合も処分対象となります。
◎利害関係人による申告と措置請求
建設工事で処分対象となる事実があった場合、利害関係人は管轄の都道府県知事に対してその事実を申告し、しかるべき措置をとるように求めることができます。当然に無許可業者も対象としています。
◎報告徴収と立ち入り検査
国土交通大臣または都道府県知事は、特に必要があると認めるときは、許可の有無に関係なく、すべての建設業者に対して、業務・財産・工事施工の状況について必要な報告をさせることができます。また、職員に立ち入り検査をさせることもできます。
◎公正な請負契約の締結義務と書面記載・署名による相互交付義務
請負契約の当事者となるすべての建設業者及び発注者は、それぞれが対等な立場で公正な契約を締結し、誠実に履行しなければなりません。また、契約書面に記載する事項も定められており、署名または記名押印が必要です。
◎建設工事紛争審査会による紛争解決
建設工事の請負契約に関して紛争がある場合は、紛争を解決するために国土交通省・都道府県に設置されている建設工事紛争審査会に対し、あっせん、調停及び仲裁を求めることができます。
どんな処分・罰則があるのか
無許可で請負金額500万円以上の工事を請け負った場合は、工事が行われている区域を管轄する都道府県から行政処分を受けることになります。
まず不正行為に対しての指示処分(業務改善命令)があり、指示に従わない場合に営業停止処分が行われるのが一般的です。不正行為の内容・程度により営業停止処分を受ける場合もあります。さらに罰則を受ける可能性もでてきます。
◎行政処分
建設業法には「国土交通大臣又は都道府県知事は、(中略)一年以内の期間を定めて、その営業の全部または一部の停止を命ずることができる。」と規定されています。
大阪府が公表している監督処分基準では「3日以上の営業停止」とされています。
特定建設業の許可を受けずに請負金額4,000万円以上の下請契約を締結した場合も同様です。
その他、無許可の業者と下請契約した元請業者も処分の対象となります。「7日以上の営業停止」とされています。
【処分事例】
主たる営業所 | 処分内容 | 処分の原因・事実 |
大阪市●●区 | 30日間営業停止 | 当該建設業者は、大阪市内の民間発注工事(以下、「本件工事」という。)において、建設業法第16条第1号の規定に違反して、同法第3条第1項第2号に掲げる区分による許可を受けないで下請代金の額が同号の政令で定める金額以上となる下請契約を株式会社●●と締結した。 |
兵庫県●●市 | 30日間営業停止 | 当該建設業を営む者は、大阪市内の民間発注工事において、建設業法第3条第1項の規定に違反して、同項の許可を受けないで請負代金の額が建設業法施工令第1条の2に定める金額以上となる建設工事を請け負った。(無許可営業) |
◎罰則
建設業法第47条に「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」と規定されています。
情状により両方が科せられることもあります。
特定建設業の許可を受けずに請負金額4,000万円以上の下請契約を締結した場合も同様です。
その他、営業停止・禁止処分に違反して営業を続けた場合や虚偽・不正によって建設業許可や更新を受けた場合も同様の罰則が規定されています。
最後に
建設業の許可がなければ、請負金額500万円以上の工事を請け負うことができないというのは比較的良く知られていることだと思います。
一方、違反して請け負った場合の処分・罰則まで把握している方は少ないのではないでしょうか。
知らなかった、うっかりしていたでは済まされないことなので、十分に注意してください。
また、請負契約や工事施工に関しては、許可の有無に関係なくすべての建設業者が守らなければならないことも多くあり、無許可業者だから責任・義務が少ないというわけではありません。
この記事は行政書士が執筆・監修しています。 アールエム行政書士事務所/代表/金本 龍二(かねもと りゅうじ) 本記事は建設業に特化した事務所の行政書士が執筆・監修しています。 行政書士の詳しいプロフィールはこちら |
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