Ryuji Kanemoto
特定建設業許可を取得する必要はあるのか|一般建設業許可との違いを解説
更新日:1月10日

建設業許可には一般建設業許可と特定建設業許可があります。
建設業許可をはじめて新規で取得する際に、特定建設業許可を取得するケースはあまり見られません。
2022年3月時点で建設業許可を取得している業者は475,293業者となっていますが、その内、特定建設業許可を取得している業者はわずか47,823業者しかありません。ほんの1割程度です。
そもそも特定建設業許可が必要になる機会が少ないから、特定建設業許可を取得したいけれど許可要件が厳しく取得するのが難しいから、おそらくどちらの理由もあるのだと思います。
この記事では、特定建設業許可はどのようなときに必要なのか、どのような許可要件が求められるのか、一般建設業許可と比較しながら解説します。
ぜひご参考にしていただければと思います。
▼目次
(2)請負金額自体には制限なし
(1)専任技術者要件が異なる
(2)財産要件が異なる
4.最後に
一般建設業許可・特定建設業許可は許可の区分の1つ
建設業許可には許可の区分と種類(業種)があります。区分と種類(業種)によって申請時の申請先や許可要件等が異なります。一般建設業許可・特定建設業許可の区分もそのひとつです。
●一般建設業許可・特定建設業許可
元請としての下請への発注金額によって区分されます。業種ごとにいずれかを選択します。
複数の営業所を構えている場合に、A営業所では建築工事業(一般)、B営業所では建築工事業(特定)というように 同じ業種の一般建設業許可と特定建設業許可を混在させることはできません。
それぞれ許可要件が異なります。
●大臣許可・知事許可
営業所をどこに置くかで変わります。同じ都道府県内であれば複数の営業所を置いても知事許可、他都道府県に跨って複数営業所を置く場合は大臣許可になります。
大臣許可の建設業者は全国でわずか0.1%しかいません(2022年3月時点)。
それぞれ申請先と申請手数料が異なります。
●業種
全29業種あり、業種ごとに許可を受けなければなりません。それぞれ許可要件(専任技術者)が異なります。
一般建設業許可と特定建設業許可の違いは下請発注金額
一般建設業許可と特定建設業許可の違いがわかるように3つのポイントに分けて説明します。
■ 元請としての下請への発注金額制限
■ 請負金額自体には制限なし
■ 下請への発注金額に含まれるもの
下請への発注金額制限について正しく理解しておかないと、自社が元請として請け負うことができる工事なのかどうか判断を間違ったり、罰則を受ける可能性もでてくるので注意しましょう。
◎元請としての下請への発注金額制限
一般建設業許可は、元請として下請に発注できる金額が4,500万円(建築一式工事は7,000万円)未満と決められています。それ以上の発注金額になる場合は、特定建設業許可を取得していなければなりません。
令和4年末までは下請発注金額の制限が4,000万円(建築一式工事は6,000万円)未満だったので、一般建設業許可で対応できる範囲が広がったということです。大半の建設業者にとっては十分に収まる金額なのではないでしょうか。
ちなみに、あくまで元請としての下請発注金額の制限なので、再下請の場面では下請発注金額に制限はありません。また、自社施工が大半で下請への発注がほぼないのであれば、特定建設業許可は不要ということになります。
◎請負金額自体には制限なし
よくある勘違いで、一般建設業許可と特定建設業許可で請け負える金額自体に差があると思われていることがあります。これは間違いで、請負金額自体には制限はありません。元請であっても下請であっても同様です。
【一般建設業許可が必要なパターン】

・元請として下請発注金額が2,000万円+1,000万円で4,500万円未満なので、元請としての請負金額がいくらであっても一般建設業許可で足ります。
【特定建設業許可が必要なパターン①】

・元請として下請発注金額が3,000万円+1,500万円で4,500万円以上なので、特定建設業許可が必要になります。
【特定建設業許可が必要なパターン②】

・元請として下請発注金額が8,000万円で4,500万円以上なので、特定建設業許可が必要になります。
・1次下請業者は8,000万円の工事を請け負い、2次下請業者への発注金額が4,500万円以上ですが、再下請発注なので特定建設業許可は必要ありません。請負金額自体にも制限はありません。
◎下請けへの発注金額に含まれるもの
下請発注金額が制限を超えているかどうかの判断には消費税を含めて考えます。
元請業者が下請業者に資材を提供する場合がありますが、この代金は発注金額には含まれません。
特定建設業許可は一般建設業許可に比べて許可要件が厳しい
一般建設業許可とは異なる2つの許可要件を説明します。
■ 専任技術者要件が異なる
■ 財産要件が異なる
特定建設業許可は、前述のように下請への発注金額が大きくなります。建設業者のベースにある発注者保護に加えて、技術的な面、金銭的な面で下請保護が求められるので、一般建設業許可に比べて要件が厳しくなります。
◎専任技術者要件が異なる
国家資格者が特定建設業の専任技術者になるためには、基本的にその資格が1級クラスまたは科学技術系資格の最高峰と言われる技術士でなければなりません。
業種ごとに対応する資格はこちらの記事でご確認ください。
一般建設業の専任技術者要件に該当する者が、指導監督的実務経験を2年以上持っていれば、特定建設業の専任技術者になることもできます。(指導監督的実務経験とは、元請として請け負った4,500万円以上の工事において現場監督のような立場での実務経験を指します。)
ただし、指定建設業(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業)の場合は認められません。
◎財産要件が異なる
一般建設業の場合、財産的基礎(自己資本500万円以上)があるか、金銭的信用(預金残高500万円以上)があるかのいずれかで財産要件を満たすことができますが、特定建設業の場合は、直前の決算において以下のすべてをクリアして財産的基礎があることを証明できなければなりません。
なお、5年ごとの更新の際にもクリアできているのかチェックされます。
✅欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
✅流動比率が75%以上であること。
✅資本金の額が2,000万円以上であること。
✅自己資本の額が4,000万円以上であること。
最後に
以上のことを踏まえて、一般建設業許可で十分、将来的に特定建設業許可をしたい等、置かれている状況によって考えは様々かと思います。
大規模工事になってくると、どうしても外注しなければならない工事が増えてくるはずです。
ある程度準備をしておかないと許可要件を満たすのは難しいですが、事業規模を拡大していく想定であれば、特定建設業許可の取得は避けられないことでしょう。
業務多忙で許可申請に時間を費やせない、許可要件をクリアできているのかどうか自信がない等、お悩みの方はぜひ専門家である行政書士にご相談いただければと思います。
![]() | この記事は行政書士が執筆・監修しています。 アールエム行政書士事務所/代表/金本 龍二(かねもと りゅうじ) 本記事は建設業に特化した事務所の行政書士が執筆・監修しています。 行政書士の詳しいプロフィールはこちら |
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