・決算関係の書類はすべて任せきりにしている
・仕組みを理解せず毎年手探りで書類を作っている
建設業財務諸表は非常に重要であるにも関わらず、その中身を正しく理解せず、機械的に税理士の決算書を転記し、決算変更届等の手続きのみを済ませてしまっていることがよくあります。
届出義務さえ果たしていればそれで構わないという考え方もできますが、事業運営に欠かせない指標でもあるので、内容の理解を深めておくに越したことはありません。
本記事では建設業財務諸表の損益計算書に絞り重要ポイントを詳しく解説しています。
ぜひご参考にしていただければと思います。
▼目次
5.最後に
税法会計の決算書≠建設業法の財務諸表
建設業許可を取る時や取った後の決算時に提出する財務諸表は、税法会計の決算書とは別の書類です。
いわゆる一般的にイメージされる確定申告の添付書類のことではありません。
建設業法に定められた以下の様式で建設業に特有の勘定科目を用い、税理士の作った決算書を参考に会計規則に沿って作ります。
決算変更届(経審:経営状況分析)や新規許可申請の時に添付しなければなりません。
※会社設立間もない(決算未到来)の場合は、開始貸借対照表のみ提出
【建設業財務諸表】
●貸借対照表(様式第15号) ●損益計算書・完成工事原価報告書(様式第16号) ●株主資本等変動計算書(様式第17号) ●注記表(様式第17号の2) |
損益計算書の位置づけ・つながりを理解する
【財務諸表のつながり】
貸借対照表を見ると、会社がどのように資金を調達し、それを何に投資(置き換え)しているかがわかります。
資本金や銀行借入等で用意した資金を事業運営に必要な固定資産に投資したり、現金資産に置き換えています。
それを運用し、1年間でどのくらいの利益を出せたのかを表しているのが、損益計算書です。
最終的に残った利益が繰越利益剰余金として積み上がっていき、また投資・運用されるというサイクルが続いていきます。
人件費を正しく振り分ける
損益計算書を作る時、人件費の正しい計上が1番のポイントになります。
建設業では、計上先が売上原価と販管費の2つに大きく分かれます。
現場に従事する人件費は売上原価(工事原価)として計上し、現場に直接従事しないバックオフィス等の人件費は経費(販管費)として計上します。
兼業がある場合も売上原価(兼業原価)として計上します。
【損益計算書・完成工事原価報告書の人件費計上箇所】
【人件費の振り分け】
中小建設業者では役員が主任技術者等を務めることも多いので、その場合は役員報酬全額を役員報酬に計上せず、現場に従事した割合分は工事原価の経費(うち人件費)に計上すべきでしょう。
また、かかった人件費を工事原価に一切振り分けず、すべて販管費で計上していたり、工事原価には振り分けているものの、経費(うち人件費)には全く計上していないといったケースがよくみられます。
この場合、書類だけみると工事の丸投げになってしまうので注意が必要です。
その他の勘定科目も間違わないよう正しく計上する
建設業では上記で解説した人件費を含め、工事にかかった原価を正しく算定することが重要になります。
【完成工事原価報告書の経費】
【損益計算書 販管費勘定科目】
各勘定科目を理解し、工事にかかった経費として計上する費用(工事原価)と本社経費として計上する費用(販管費)を正しく区別できるようにしましょう。
原則、様式にある勘定科目のみを使用しますが、雑費に計上した費用の中で販管費総額の10%を超えるものは勘定科目を追記します。
最後に
建設業財務諸表の損益計算書・完成工事原価報告書は、内容を理解した上で、正しく作ることが求められます。
ポイントをまとめると
✅決算時に税理士が作った損益計算書とは別の書類 ✅1年間の収益性を把握するための重要指標 ✅人件費をはじめとする経費を工事原価と販管費に正しく振り分ける |
税理士の作った損益計算書の勘定科目をいかに正確に建設業向けに変換し、正しい工事原価、粗利を算出できるかが重要になります。
特に正確な粗利率の把握は、事業の利益改善に不可欠です。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。 ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、 建設キャリアアップシステムをサポート。 |
当事務所では、大阪府知事の建設業許可を中心に申請代理、その他経営事項審査や入札参加資格申請までサポート全般を承っております。建設キャリアアップシステムについても代行申請を全国対応で承っております。
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