建設業許可「電気工事業」完全ガイド|許可要件から電気工事業法との関係まで解説!
- Ryuji Hemmi

- 2 日前
- 読了時間: 7分

「電気工事業」は、送電設備から変電設備据付けや建築物の電気配線まで、電気を安全に供給するために、あらゆる現場で欠かすことのできない設備工事です。
他の業種と同様、請負金額が500万円以上(税込)の工事を請け負う場合は、建設業許可が必要になります。
それに加え、「電気工事業」は、電気工事士法と電気工事業法との関係も整理しておかなければなりません。
この記事では、「電気工事業」の工事範囲、他制度との違い、許可取得の要件や流れを行政書士がわかりやすく解説します。

💡この記事のポイント ●「電気工事業」は送電設備から建物・施設の電気設備までを扱う専門業種 ●請負金額500万円以上の工事では建設業許可が必要 ●「電気工事登録」と「建設業許可」は別制度 ●技術者要件は電気工事士・施工管理技士など |
▼目次
7.最後に
「電気工事業」の位置づけと登録制度との違い
電気工事業は、送電・変電設備から構内電気設備工事まで幅広く、インフラ整備に欠かせない専門業種です。
一般の電気工事業者が実際に行うのは、次のような建築物や施設内の電気設備工事が中心です。
・建物・施設の受変電設備工事
・分電盤・照明・コンセント・電力機器の配線・設置
・防災・通信・制御設備への電源供給
電気工事は感電・火災などの重大事故に直結するため、他業種よりも安全・資格制度が厳しく設けられています。そのため、「建設業許可」と「電気工事業登録」という2つの制度が併存しています。
制度 | 根拠法例 | 対象 |
建設業許可 | 建設業法 | 500万円以上の工事請負 |
電気工事業登録 | 電気工事業法、電気工事士法 | 電気工事の現場施工 |
したがって、500万円以上の電気工事を請け負い、自ら施工する場合は、建設業許可・電気工事業登録の両方への申請が必要になります。
👉電気工事業登録について詳しくは別記事で解説しています。
建設業許可「電気工事業」が必要となるケース
建設業許可が必要となるのは、**請負金額が500万円以上(税込)**の電気工事を行う場合です。
この金額には、材料費・運搬費を含みます。契約書を分割しても、実質的に一つの工事であれば合算して判断されます。
主体が電気工事の場合は、他業種が関わっていても「電気工事業」として許可が必要です。
一方、主体が他業種でも、付帯的に配線や電源接続を行う場合は「電気工事業登録」が求められるケースがあります。
【電気工事が混在するケースが多い工事】
工事内容 | 該当業種 | 混在ポイント |
エアコン設置 | 管工事 | 冷媒配管と電気配線 |
太陽光パネル設置 | 屋根工事 | 架台設置と電気接続 |
エレベーター・機械設置 | 機械器具設置工事 | 組立・据付と電気配線 |
LAN・防犯・通信配線 | 電気通信工事 | 弱電と強電 |
自火報・非常放送設備 | 消防施設工事 | 防火設備と電気設備 |
「電気工事業」許可取得の6つの要件
①経営業務の管理責任者…建設業の経営経験5年以上が基本。法人なら役員、個人なら本人。
②専任技術者…国家資格(電気工事士、施工管理技士など)※原則、実務経験のみでは認められない
③財産的基礎…純資産500万円以上または同額の預金残高証明
④誠実性・欠格要件…虚偽申請や行政処分歴、暴力団関係がないこと
⑤営業所…実態を備えた事務所があること(机・電話・商号掲示など)。
⑥社会保険等…法律上加入義務のある保険に加入していること(社会保険・労働保険)
他業種と比べて特に厳格なのは「専任技術者」の要件です。
資格を持たない実務経験のみの申請は原則認められません。
「実務経験=現場施工経験」が前提で、電気工事の現場施工は資格が必要なので、資格のない実務経験はありえないという考え方です。※都道府県によっては、資格を持たない実務経験が認められる可能性があります。
専任技術者の資格・実務経験
【主な国家資格】
・第1種・第2種電気工事士
※第2種は資格取得後3年以上の実務経験必要
・1級・2級電気工事施工管理技士
・電気主任技術者(1種・2種・3種)
※資格取得後5年以上の実務経験必要
【実務経験】
他業種のように実務経験(10年以上)のみでは認められません。
第二種電気工事士の資格を取得して、3年以上の実務経験を積むパターンが割合としては多いです。
この場合、対象となる工事内容が確認できる請負契約書、注文書・請書などの証拠書類を3年分準備しなければなりません。
許可申請の流れと提出書類
1️⃣ 証明書類の準備
・経営経験を示す書類(確定申告書・履歴事項全部証明書・工事契約書など)
・専任技術者の資格を証明する合格証書または実務経験証明書・工事契約書など
※電気工事は、無資格の実務経験が原則認められないため、工事の時期・内容には注意が必要です。
・財産的基礎を示す財務諸表や残高証明書
2️⃣ 申請書類の作成
・申請区分(新規・業種追加・般特新規)に応じて作成
・約20種類の書類を正本・副本で提出
3️⃣ 行政庁窓口への申請
知事許可:申請手数料9万円(更新5万円)
大臣許可:登録免許税15万円(更新5万円)
審査期間:約30日(大阪府の場合)
「電気工事業」許可取得のメリット
電気工事業の建設業許可を取得することで、単に請負金額の上限が広がるだけではなく、信用・評価の面で大きな経営効果を得ることができます。
✅ 対外的信用力の向上(元請・取引先・金融機関)
電気工事業は、官公庁・電力会社・ゼネコンなど、取引先が法令遵守を重視する業界です。
建設業許可の取得は、経営体制・技術力・法令遵守の裏付けとなります。
✅ 公共工事への参入が可能(経審・入札参加資格申請が必要)
外線工事から内線工事まで多岐にわたり、比較的、案件数の多い業種です。
許可取得・入札参加で売上規模拡大につなげることができます。
✅ 受注機会の拡大(元請・下請両面で安定的な取引関係)
許可取得により、これまで下請として関わっていた案件を元請としてまとめることも可能になります。もちろん、施工実績の積み上げ、営業努力は欠かせません。
建設業許可の取得は、電気工事を営む事業者にとって重要な経営戦略です。
法的義務というよりも、将来の受注拡大と信用力向上のための投資と捉えるのがよいでしょう。
最後に
「電気工事業」は、建設現場の“安全と機能”を支える極めて重要な業種です。
単に配線や照明を取り付けるだけでなく、建物全体の動力・通信・防災・省エネに関わる中枢インフラを担っています。
そのため、技術の正確さはもちろん、法令遵守・安全管理・資格体制が厳しく求められます。
建設業許可を取得することは、そのすべてを公的に証明し、信頼される施工体制を整える第一歩となります。
建設業許可は「義務」ではなく「経営の選択」です。
電気工事業を長く続けるための“信頼と発展の証”として、早い段階での許可取得をおすすめします。
![]() | この記事の執筆者 逸見 龍二(へんみ りゅうじ) アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、建設業専門の行政書士事務所を開設。 知事許可・大臣許可ともに特殊案件含め実績多数。経営事項審査も年商数千万円の企業から40億円規模の企業まで幅広く対応。入札参加資格審査申請は全国自治体で申請実績あり。事務所HP |
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