電気工事はあらゆる現場で欠かすことのできない設備工事なので、「電気工事業」という業種は需要の高い業種の1つと言えるでしょう。
防災設備や弱電設備も施工できるように「消防施設工事業」と「電気通信工事業」も合わせて許可取得しているケースもよく見られます。
独立した専門工事として分離発注されることが多く、公共工事においても元請として受注できる機会が多いので、資格等要件をクリアできるのであれば、「電気工事業」の建設業許可は取得したいところです。
建設業許可を取得したいけれど、許可要件や仕組みがよくわからない、どんな手続きがいるのかわからない、といったご意見をよくうかがいます。
この記事では「電気工事業」の建設業許可の取得方法を解説しています。
ご参考にしていただければ幸いです。
▼目次
(1)電気工事に該当する工事
(1)経営能力があること
(2)技術力があること
(3)財産的基礎があること
(5)営業所を有していること
(2)必要な申請書類の作成
(3)行政庁窓口への申請
4.最後に
「電気工事業」の許可を取得すると500万円以上の電気工事を請け負うことができる
「電気工事業」の許可を取得する上で知っておくべきポイント3つを紹介します。
■ 電気工事に該当する工事
■ 請負金額500万円以上の電気工事
■ 「電気工事業」の許可を取得するメリット
「電気工事業」の許可を取得すると、どんな工事を請け負うことができて、どんなメリットがあるのか正しく理解しておきましょう。
◎電気工事に該当する工事
電気工事とは、建設工事の中で、発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事のことを言います。
具体的な例としては、照明器具工事、電灯・コンセント工事、電柱から幹線を引き込む工事、屋内外の配線工事など。
◎請負金額500万円以上の電気工事
請負金額500万円は消費税を含み、注文者が材料提供する場合は材料費と運送費も含みます。
契約書や請求書を分割しても、実態として1つの工事であれば、当然に合計金額で見られます。
その他注意点としては、
✅一般建設業許可の場合のみ、元請としての下請への発注金額に4,500万円未満(建築一式工事は7,000万円未満)という制限があります。特定建設業許可の場合は制限がありません。
✅自社が下請の場合の2次下請への発注金額には制限がありません。
✅請負金額自体には一般建設業許可、特定建設業許可いずれにも制限はありません。
◎「電気工事業」の許可を取得するメリット
✅取引先や金融機関など、対外的に信用度が上がる。
✅大規模な工事を受注できるようになる。
✅電気工事で公共工事の入札参加が可能になる。(別途、手続きは必要)
「電気工事業」の許可を取得するための要件
「電気工事業」の許可要件5つを説明します。
■ 経営能力があること
■ 技術力があること
■ 財産的基礎があること
■ 欠格要件に該当していないこと、誠実性があること
■ 営業所を有していること
許可要件を一つずつ入念に確認していきましょう。特に常勤役員等(経営業務の管理責任者)と専任技術者は重要な許可要件であり、建設業者にとっての要です。
それぞれの下にリンクを貼っているので別記事もあわせて確認してみてください。
◎経営能力があること
●常勤役員等(経営業務管理責任者)
法人であれば役員、個人事業主であればその本人に、建設業での経営経験が5年以上必要です。
(建設業での経営経験とは、建設会社での役員・支店長、建設業を営む個人事業主の経験のこと)
他にも要件を満たす方法はありますが、認められないケースも多く、難易度が上がります。
別記事で詳しく解説しています。
●社会保険への加入
法律上加入義務のある保険に正しく加入していることが求められます。
健康保険・厚生年金保険・・・法人または従業員5人以上の個人事業主は適用事業所
雇用保険・・・法人・個人事業主関係なく、1人でも雇用していれば適用事業所
◎技術力があること
●専任技術者
「電気工事業」の専任技術者になり得る国家資格(一部、合格後の実務経験も必要)を保有している人を営業所ごとに専任の技術者として配置しなければなりません。
※「電気工事業」は特殊な業種なので、電気工事士等の資格がなければ直接施工を行うことができません(一部の軽微な作業を除く)。
そのため実務経験を証明するのが他の業種よりも難しくなることがあります。
【「電気工事業」の専任技術者になり得る国家資格】
・1級電気工事施工管理技士
・2級電気工事施工管理技士
・技術士(建設部門、総合技術監理部門「建設」)
・技術士(電気電子部門、総合技術監理部門「電気電子」)
・第1種電気工事士
・第2種電気工事士
・電気主任技術者(第1種~第3種)
・建築設備士
・計装
※色を付けた資格は特定建設業許可においても認められます。他の資格は一般建設業においてのみ認められます。
※第2種電気工事士は、合格後3年以上の実務経験が必要です。
※電気主任技術者(第1種~第3種)は、合格後5年以上の実務経験が必要です。
※建築設備士、計装は合格後1年以上の実務経験が必要です。
【実務経験】
実務経験とは、電気工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいいます。
現場施工に関しては、電気工事士の資格を保有していることが前提となります。ただ単に電気工事の雑務のみ行っていた場合は経験として認められません。設計技術者や現場監督や土工及びその見習いの経験等は認められます。
指定学科卒業による実務経験期間の短縮はありません。他の業種のように実務経験10年以上というパターンがないからです。
「電気工事業」は指定建設業に該当するため、一般建設業の専任技術者に該当する者が、指導監督的実務経験を2年以上持っている場合でも特定建設業の専任技術者になることはできません。
特定建設業の専任技術者になるには、「1級電気工事施工管理技士」か「技術士(建設部門、電気電子部門、総合技術監理部門(建設、電気電子)」しか選択肢がないということです。
◎財産的基礎があること
>一般建設業許可の場合
直前の決算で純資産合計が500万円以上あることが求められます。
なければ、500万円以上の預金残高(資金)で金銭的信用があることを証明します。
>特定建設業許可の場合
直前の決算期の財務諸表において以下のすべてをクリアしていることが求められます。
✅欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
✅流動比率が75%以上であること。
✅資本金の額が2,000万円以上であること。
✅自己資本の額が4,000万円以上であること。
500万円の準備が難しい方は、こちらの記事もご参考にしてください。
◎欠格要件に該当していないこと、誠実性があること
法人では役員や執行役、相談役、顧問、個人株主(議決権5%以上)など、個人事業主はその本人が欠格要件に該当していると、許可されません。
〈許可制度の本質から当然に要求されること〉
✅申請書類や添付書類の中の重要な事項について、虚偽の記載もしくは欠落があるとき
〈法人の役員等や個人事業主の欠格事由〉
✅破産者で復権を得ない者
✅建設業許可の取消を受けて5年を経過しない者
✅監督処分による許可取消を免れるために廃業届を提出してから5年を経過しない者
✅営業停止処分を受け、その停止期間が経過しない者
✅禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、または執行猶予期間が満了してから5年を経過しない者
✅一定の法令の規定に違反して罰金以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、または執行猶予期間が満了してから5年を経過しない者
✅暴力団員等に事業活動を支配されている者
✅暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
✅精神の機能の障害により建設業を適正に営む事ができない者
◎営業所を有していること
建設業の営業を行う事務所(=建設工事に係る請負契約を締結するなど、見積り、入札、契約締結に係る実体的な行為を行う事務所)を主たる営業所として設ける必要があります。
従たる営業所(支店)を設ける場合は、その営業所に支店長や専任技術者を配置しなければなりません。
従たる営業所(支店)が主たる営業所と異なる都道府県にある場合は、国土交通大臣の許可になるのでご注意ください。
営業所の要件は以下のとおりです。
✅営業所として常時使用する権限を有していること。
✅建物の外観または入口で、商号または名称が確認できること。
✅固定電話、事務機器、机等什器備品を備えていること。
✅許可取得後は、建設業の許可票を掲示していること。
✅経営業務の管理責任者(従たる営業所は支店長等)、専任技術者が常勤して専らその職務に従事していること。
別記事で詳しく解説しています。
「電気工事業」の許可を取得するための具体的な申請手続き
「電気工事業」の許可申請の具体的な手続きについて説明します。
■ 許可要件を満たしていることを証明する書類準備
■ 必要な申請書類の作成
■ 行政庁窓口への申請
所定の申請書類を作成して提出するだけではなく、許可要件を満たしていることを証明する書類を準備しなければなりません。証明書類は都道府県によって判断が異なるものがあるので、事前に手引き等を確認しましょう。
◎許可要件を満たしていることを証明する書類準備
常勤役員等(経営業務管理責任者)の経営経験5年以上を証明する確認書類、専任技術者の国家資格を証する書面・実務経験を証明する確認書類、財産的基礎を証明する財務諸表や残高証明書など、各要件を満たしていることを客観的に証明する書類を準備します。
◎必要な申請書類の作成
新規・業種追加・般特新規、申請パターンに応じて必要申請書類を作成します。
およそ20種類ほどの書類が必要です。
◎行政庁窓口への申請
申請書類は正本1部と副本1部を提出します。
都道府県によって書類の綴じ方が異なりますのでご注意ください。
申請にかかる費用については、知事許可は申請手数料として9万円(新規)
大臣許可は登録免許税として15万円(新規)が必要となります。業種追加の場合は、知事許可、大臣許可いずれも5万円。行政書士に依頼した場合は、別途、報酬額が必要になります。
申請受付窓口は大臣許可と知事許可で異なります。
(知事許可/申請窓口)
(大臣許可/申請窓口)
最後に
以上、「電気工事業」を取得する上で重要なポイントを解説いたしました。
特に技術力(専任技術者)の要件が高いハードルに感じるのではないでしょうか。
また、「電気工事業」には登録制度というものもあり、許可業者であっても別途手続きが必要になることがあります。
「電気工事業」の登録制度についてはこちらの記事をご確認ください。
実際の申請現場ではイレギュラーなことが頻出します。
要件を満たしていると喜んだのもつかの間、それを証明する書類がわずかに不足し、許可取得を断念するケースも出てきます。
許可要件を満たしているのかどうか、証明書類が合っているのかどうか、不安な方は一度、専門家に相談してみてください。
この記事は行政書士が執筆・監修しています。 アールエム行政書士事務所/代表/金本 龍二(かねもと りゅうじ) 本記事は建設業に特化した事務所の行政書士が執筆・監修しています。 行政書士の詳しいプロフィールはこちら |
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