「解体工事業」は2016年6月に新しく追加された業種です。それまでは「とび・土工工事業」の中に含まれていましたが、解体工事の重要性や専門性を踏まえて、分離されました。
許可を取得している業者数はすでに62,738社まで増えています(2022年3時点)。これは、2021年6月まで技術者の経過措置があったので、その間に「解体工事業」の技術者届出及び許可取得が進んだからです。「とび・土工工事業」の許可取得業者が176,906社と全業種で1番多いことを考えると「解体工事業」の許可取得業者数はまだ少ないのかもしれません。
解体工事の完成工事高は1兆円を超え、市場規模は年々大きくなっています。高度成長期に建てられた建物の老朽化が進み、取り壊し・建て替えの需要が高まっているからです。今後も需要は拡大していくと予測されています。
産業廃棄物処理のコスト増やアスベスト対策といった難しい課題がありますが、今後の需要を考えて「解体工事業」の許可取得を検討しても良いのではないでしょうか。
▼目次
(1)解体工事に該当する工事
(1)経営能力があること
(2)技術力があること
(3)財産的基礎があること
(5)営業所を有していること
(2)必要な申請書類の作成
(3)行政庁窓口への申請
4.最後に
「解体工事業」の許可を取得すると500万円以上の解体工事を請け負うことができる
「解体工事業」の許可を取得する上で知っておくべきポイント3つを紹介します。
■ 解体工事に該当する工事
■ 請負金額500万円以上の解体工事
■ 「解体工事業」の許可を取得するメリット
解体工事はどこまでが「解体工事業」に区分されるのか、とても判断が難しい工事です。許可を取得すると、どんな工事を請け負うことができて、どんなメリットがあるのか正しく理解しておきましょう。
◎解体工事に該当する工事
解体工事とは、工作物の解体を行う工事とされています。文字通り、イメージ通りです。
しかし、工作物を解体する工事はすべて解体工事に区分されるわけではありません。
以下の基準で判断することになります。
・橋、ダムなどの土木工作物の解体する工事・・・土木一式工事
・建築物の解体と新設を一体で行う工事、3階建て以上のビル等大規模な建築物を解体する工事・・・建築一式工事
・平屋や2階建ての大規模ではない家屋等を解体する工事・・・解体工事
・内装のみの撤去、足場のみの撤去などを行う工事・・・各専門工事
実際のところ、解体工事の範囲内なのか、一式工事になるのかは、工事の内容・規模等から総合的に判断されます。
ちなみに大阪市の公共工事では、5階建て程度の大規模な団地の発注において特定建設業「解体工事業」を条件としています。
◎請負金額500万円以上の解体工事
請負金額500万円には消費税が含まれ、注文者が材料提供する場合は材料費と運送費も含まれます。
契約書や請求書を分割しても、実態として1つの工事であれば、当然に合計金額で見られます。
その他注意点としては、
✅一般建設業許可の場合のみ、元請としての下請への発注金額に4,500万円未満(建築一式工事は7,000万円未満)という制限があります。特定建設業許可の場合は制限がありません。
✅自社が下請の場合の2次下請への発注金額には制限がありません。
✅請負金額自体には一般建設業許可、特定建設業許可いずれにも制限はありません。
◎「解体工事業」の許可を取得するメリット
✅取引先や金融機関など、対外的な信用度が上がる。
✅大規模な工事を受注できるようになる。
✅解体工事で公共工事の入札参加が可能になる。(別途、手続きは必要)
「解体工事業」の許可を取得するための要件
「解体工事業」の許可要件5つを説明します。
■ 経営能力があること
■ 技術力があること
■ 財産的基礎があること
■ 欠格要件に該当していないこと、誠実性があること
■ 営業所を有していること
許可要件を一つずつ入念に確認していきましょう。特に常勤役員等(経営業務の管理責任者)と専任技術者は重要な許可要件であり、建設業者にとっての要です。
それぞれの下にリンクを貼っているので別記事もあわせて確認してみてください。
◎経営能力があること
●常勤役員等(経営業務管理責任者)
法人であれば役員、個人事業主であればその本人に、建設業での経営経験が5年以上必要です。
(建設業での経営経験とは、建設会社での役員・支店長、建設業を営む個人事業主の経験のこと)
他にも要件を満たす方法はありますが、認められないケースも多く、難易度が上がります。
別記事で詳しく解説しています。
●社会保険への加入
法律上加入義務のある保険に正しく加入していることが求められます。
健康保険・厚生年金保険・・・法人または従業員5人以上の個人事業主は適用事業所
雇用保険・・・法人・個人事業主関係なく、1人でも雇用していれば適用事業所
◎技術力があること
●専任技術者
「解体工事業」の専任技術者になり得る国家資格を保有している人か、解体工事の一定以上の実務経験がある人を営業所ごとに専任の技術者として配置しなければなりません。
【「解体工事業」の専任技術者になり得る国家資格】
・1級土木施工管理技士
・2級土木施工管理技士(土木)
・1級建築施工管理技士
・2級建築施工管理技士(建築、躯体)
・技術士(建設部門、総合技術監理部門「建設」)
・技能検定「とび・とび工1級・2級」
※土木施工管理技士と建築施工管理技士の2015年度までの合格者は1年以上の実務経験か登録解体講習の受講が必要です。技術士合格者については当面の間、1年以上の実務経験か登録解体講習の受講が必要です。
※色のついた資格は特定建設業許可においても認められます。他の資格は一般建設業許可においてのみ認められます。
※技能検定2級の場合、3年以上の実務経験が必要です。
【実務経験】
実務経験とは、解体工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいいます。ただ単に解体工事の雑務のみ行っていた場合は経験として認められません。設計技術者や現場監督や土工及びその見習いの経験等は認められます。
10年以上の実務経験があれば、一般建設業の専任技術者になることができます。
特定建設業の場合は10年以上の実務経験だけでは専任技術者になることはできません。
一般建設業の専任技術者要件に該当する者が、指導監督的実務経験を2年以上持っていれば、特定建設業の専任技術者になることもできます。(指導監督的実務経験とは、元請として請け負った4,500万円以上の工事において現場監督のような立場での実務経験を指します。)
>実務経験期間の短縮
以下の指定学科を大学で修了した人は実務経験3年、高校で修了した人は実務経験5年に短縮できます。
〈指定学科〉
土木工学または建築学に関する学科
◎財産的基礎があること
>一般建設業許可の場合
直前の決算で純資産合計が500万円以上あることが求められます。
なければ、500万円以上の預金残高(資金)で金銭的信用があることを証明します。
>特定建設業許可の場合
直前の決算期の財務諸表において以下のすべてをクリアしていることが求められます。
✅欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
✅流動比率が75%以上であること。
✅資本金の額が2,000万円以上であること。
✅自己資本の額が4,000万円以上であること。
500万円の準備が難しい方は、こちらの記事もご参考にしてください。
◎欠格要件に該当していないこと、誠実性があること
法人では役員や執行役、相談役、顧問、個人株主(議決権5%以上)など、個人事業主はその本人が欠格要件に該当していると、許可されません。
>許可制度の本質から当然に要求されること
✅申請書類や添付書類の中の重要な事項について、虚偽の記載もしくは欠落があるとき
>法人の役員等や個人事業主の欠格事由
✅破産者で復権を得ない者
✅建設業許可の取消を受けて5年を経過しない者
✅監督処分による許可取消を免れるために廃業届を提出してから5年を経過しない者
✅営業停止処分を受け、その停止期間が経過しない者
✅禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、または執行猶予期間が満了してから5年を経過しない者
✅一定の法令の規定に違反して罰金以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、または執行猶予期間が満了してから5年を経過しない者
✅暴力団員等に事業活動を支配されている者
✅暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
✅精神の機能の障害により建設業を適正に営む事ができない者
◎営業所を有していること
建設業の営業を行う事務所(=建設工事に係る請負契約を締結するなど、見積り、入札、契約締結に係る実体的な行為を行う事務所)を主たる営業所として設ける必要があります。
従たる営業所(支店)を設ける場合は、その営業所に支店長や専任技術者を配置しなければなりません。
従たる営業所(支店)が主たる営業所と異なる都道府県にある場合は、国土交通大臣の許可になるのでご注意ください。
営業所の要件は以下のとおりです。
✅営業所として常時使用する権限を有していること。
✅建物の外観または入口で、商号または名称が確認できること。
✅固定電話、事務機器、机等什器備品を備えていること。
✅許可取得後は、建設業の許可票を掲示していること。
✅経営業務の管理責任者(従たる営業所は支店長等)、専任技術者が常勤して専らその職務に従事していること。
別記事で詳しく解説しています。
「解体工事業」の許可を取得するための具体的な申請手続き
「解体工事業」の許可申請の具体的な手続きについて説明します。
■ 許可要件を満たしていることを証明する書類準備
■ 必要な申請書類の作成
■ 行政庁窓口への申請
所定の申請書類を作成して提出するだけではなく、許可要件を満たしていることを証明する書類を準備しなければなりません。証明書類は都道府県によって判断が異なるものがあるので、事前に手引き等を確認しましょう。
◎許可要件を満たしていることを証明する書類準備
常勤役員等(経営業務管理責任者)の経営経験5年以上を証明する確認書類、専任技術者の国家資格を証する書面または実務経験を証明する確認書類、財産的基礎を証明する財務諸表や残高証明書など、各要件を満たしていることを客観的に証明する書類を準備します。
◎必要な申請書類の作成
新規・業種追加・般特新規等、申請区分に応じて必要申請書類を作成します。
およそ20種類ほどの書類が必要です。
◎行政庁窓口への申請
申請書類は正本1部と副本1部を提出します。
都道府県によって書類の綴じ方が異なりますのでご注意ください。
申請にかかる費用については、知事許可は申請手数料として9万円(新規)
大臣許可は登録免許税として15万円(新規)が必要となります。業種追加の場合は、知事許可、大臣許可いずれも5万円。行政書士に依頼した場合は、別途、報酬額が必要になります。
申請受付窓口は大臣許可と知事許可で異なります。
(知事許可/申請窓口)
(大臣許可/申請窓口)
最後に
以上、「解体工事業」の建設業許可を取得する上で重要なポイントを解説いたしました。
特に経営能力(経営業務の管理責任者)と技術力(専任技術者)の要件が高いハードルに感じるのではないでしょうか。
実際の申請現場ではイレギュラーなことがよく起こります。
要件を満たしていると喜んだのもつかの間、それを証明する書類がわずかに不足し、許可取得を断念するケースも出てきます。
「解体工事業」の許可要件を満たしているのかどうか、証明書類が合っているのかどうか、不安な方は専門家に相談してみてください。
この記事は行政書士が執筆・監修しています。 アールエム行政書士事務所/代表/金本 龍二(かねもと りゅうじ) 本記事は建設業に特化した事務所の行政書士が執筆・監修しています。 行政書士の詳しいプロフィールはこちら |
当事務所では大阪府知事の建設業許可を中心に申請代理を承っております。
大阪市鶴見区・城東区・都島区・旭区を中心に大阪府全域、奈良県、兵庫県、和歌山県は標準対応エリアです。
迅速にご対応いたします。その他地域の方もお気軽にご相談ください。
ご相談はお問合せフォームからお願いいたします。
Comments