建設業許可でよくある勘違い|常用工事・500万円基準・業種判断について徹底解説
- Ryuji Hemmi
- 9月28日
- 読了時間: 8分

建設業許可の取得を目指す事業者が、よく勘違いしてしまうポイントはいくつもあります。
「建築一式工事なら何でもできる」「500万円未満なら許可不要」「人工出しの実績でも経営経験にできる」などは、その典型例です。
こうした誤解は、思わぬトラブルや申請差し戻しにつながりかねません。
この記事では、建設業許可をめぐる代表的な勘違いや落とし穴を整理し、正しい理解のためのポイントを解説します。
💡この記事のポイント ●建築一式工事の許可は万能ではない:専門工事を単独で請け負うには、個別の許可が必要 ●電気工事業の請負と施工は別物:施工には電気工事業登録が必須 ●人工出しは経験にカウントされない:派遣にあたり、建設業では原則禁止 ●500万円基準は材料費も含む:支給材料も合算して判断されるので要注意 ●一般建設業でも大規模工事は可能:特定許可が必要なのは「下請発注金額」に条件がある場合のみ |
▼目次
7. 許可通知書は再発行できる
10.最後に

建築一式工事の許可はオールマイティ
「建築一式工事の許可があれば、あらゆる建築工事を請け負える」と思われがちですが、これは誤解です。
建築一式工事とは、総合的な企画・指導・調整のもとで建物全体を建設する工事のこと。
住宅をつくる工務店やハウスメーカー、大型建築物をつくるゼネコンなどが対象となり、原則として元請の立場で総合的にマネジメントする事業者が想定されています。
一方で、内装工事や塗装工事、大工工事などを単体で請け負う場合には、実施工が想定され、それぞれの専門工事業の許可が必要です。
建築一式工事の許可がすべてをカバーする万能なものではない点に注意しましょう。

建築一式工事の要件や手続きについて、詳しくはこちらの記事で解説しています。
電気工事業の許可があれば500万円以上の請負・施工が可能
電気工事業の許可を取れば500万円以上の工事を請け負えますが、施工まで自社でできるわけではありません。
施工するには電気工事業法に基づく「電気工事業登録」と、電気工事士の資格者による施工体制が必要です。
建設業許可はあくまで請負に関するものと理解しておきましょう。
文章だけではわかりづらいので、図で整理すると下記のとおりです。

電気工事業登録の要件や手続きについて、詳しくはこちらの記事で解説しています。
5年以上の取締役経験があれば経営業務の管理責任者(経管)になれる
過去に建設会社で取締役だったからといって、自動的に経営経験として認められるわけではありません。
常勤で経営業務に携わっていた場合のみカウントされ、非常勤では不可です。
ただし、都道府県によっては柔軟な取り扱いもあるため、事前に確認が必要です。
なお、取締役経験が5年に満たない場合の救済措置として、次のような経営体制を確立することで経管になることができます。
“建設業施行規則 第七条第一号ロ 常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であつて、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあつては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあつては当該建設業を営む者における五年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。 (1) 建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者 (2) 五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者” 〈建設業施行規則より抜粋〉 |
図で整理すると下記のとおりです。

経営業務の管理責任者の要件や証明方法等、詳しいことはこちらの記事で解説しています。
常用工事(人工出し)の実績も建設業許可で認められる
人工出し(労働者を現場に送り込む形態)は労働者派遣にあたり、建設業では禁止されています。
請負と派遣の違いを図解で整理すると次のようになります。
雇用契約と指揮命令権の所在がポイントです。

そのため、建設業許可の経営経験や実務経験としては原則認められません。
一部自治体では例外的に扱うケース(専任技術者の実務経験としては認める)もありますが、基本的には「実績としてカウントできない」と理解しておくべきです。
特定の許可がないので大きな工事を請け負えない
「一般建設業の許可では大規模工事は無理」と思われがちですが誤解です。
請負金額自体に制限はなく、元請として下請に5,000万円(建築一式は8,000万円)以上を発注する場合のみ特定建設業が必要になります。
下請としてならどれだけ大規模な工事でも一般建設業許可で問題ありません。
わかりやすく整理すると、下図のとおりです。

特定建設業と一般建設業の違いをより詳しく知りたい人はこちらの記事もご確認ください。 ➤特定建設業許可とは|一般建設業許可と何が違う?要件や注意点を徹底解説!
材料費を除くと500万円未満なので許可がなくても大丈夫
建設業許可が必要かどうかの請負代金の基準500万円には材料費や運送費、消費税も含まれます。
材料費が請負契約に含まれていなくても注文者が材料支給する場合は、材料費を合算して判断するので注意が必要です。
工事代金だけで500万円未満だから大丈夫、というのは危険な勘違いです。
“建設業法施行令第一条の二 3項 注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。” 〈建設業法施行令より抜粋〉 |
許可通知書は再発行できる
建設業許可を取得すると交付される「許可通知書」の再発行はできません。
紛失した場合は「許可証明書」を発行して代替します。
こちらの方が最新情報が反映されるため、むしろ求められる場面が多いです。
しかし、「許可通知書」は経営経験の証明など重要な場面で必要になるので、失くさないように保管しておきましょう。
許可業種以外の売上はすべて「その他工事」で計上する
決算変更届では、許可業種以外の工事実績を「その他工事」に計上しますが、なんでも入れていいわけではありません。
設備管理や点検、設計、人工出しは工事に当たらないので「その他工事」ではなく「兼業売上」として処理します。
誤って振り分けると、新たに取得したい業種の実務経験の証明が難しくなったり、現在の業種選択に問題があると思われる可能性があります。
決算変更届は許可取得後はじめての決算からの提出で大丈夫
「許可を取る直前に確定した決算の決算変更届は飛ばしていい」と思われがちですが誤解です。
決算直後に許可取得する場合は、申請のタイミング次第でその期の決算変更届から提出義務があります。
わかりやすく図解すると下記のとおりです。
【確定申告前の申請】

【確定申告後の申請】

最後に
建設業許可に関する誤解は、業界内でも非常に多く見られます。
一見小さな勘違いが、許可申請の差し戻しや業務停止といった大きなリスクにつながることもあります。
本記事で紹介したポイントを押さえておけば、基本的な落とし穴は回避できるはずです。
ただし、実際の申請は各自治体の運用や担当者判断に左右される面もあります。
確実に許可を取りたい方や、不安が残る方は、建設業許可を専門に扱う行政書士にご相談いただくのが安心です。
![]() | この記事の執筆者 逸見 龍二(へんみ りゅうじ) アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、建設業専門の行政書士事務所を開設。 知事許可・大臣許可ともに特殊案件含め実績多数。経営事項審査も年商数千万円の企業から40億円規模の企業まで幅広く対応。入札参加資格審査申請は全国自治体で申請実績あり。事務所HP |
当事務所では、大阪府知事の建設業許可を中心に申請代理、その他経営事項審査や入札参加資格申請までサポート全般を承っております。建設キャリアアップシステムについても代行申請を全国対応で承っております。
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