経営状況分析が経審評価を決める!仕組みや点数改善ポイントを徹底解説!
- Ryuji Hemmi

- 2023年10月29日
- 読了時間: 7分
更新日:8月31日

建設業の経営事項審査(経審)に欠かせないのが「経営状況分析」です。
決算書の内容をもとに、財務の健全性等を数値化し、経審の評価点に直結する重要な手続きです。
経営状況分析の点数が低ければ経審の評価点に大きな影響が出てしまいますが、仕組みを理解すれば改善の余地もあります。
本記事では、経営状況分析の基本から、経審に与える影響、点数改善の具体的なポイント、そして申請時の注意点まで、役立つ情報を徹底解説します。

▼目次
1.経営状況分析とは
6.最後に
経営状況分析とは
経営事項審査では「経営状況」と「経営規模・技術力・その他社会性等」について評価されます。
「経営状況」を分析し、点数化するのが経営状況分析です。
“建設業法第二十七条二十三(経営事項審査) 2 前項の審査(以下「経営事項審査」という。)は、次に掲げる事項について、数値による評価をすることにより行うものとする。 一 経営状況 二 経営規模、技術的能力その他の前号に掲げる事項以外の客観的事項” 〈建設業法より抜粋〉 |
経営状況分析は国土交通大臣より登録を受けた登録経営状況分析機関しか行うことができません。
現在、登録経営状況分析機関は以下の10機関です。
●(一財)建設業情報管理センター
●(株)マネージメント・データ・リサーチ
●ワイズ公共データシステム(株)
●(株)九州経営情報分析センター
●北海道経営情報センター
●(株)ネットコア
●(株)経営状況分析センター
●経営状況分析センター西日本(株)
●(株)NKB
●(株)建設業経営情報分析センター
どこに申請しても分析結果は同じですが、分析手数料や審査期間は機関ごとに異なります。
申請システムの使いやすさ等も比較して決めると良いでしょう。
“建設業法第二十七条二十四(経営状況分析) 前条第二項第一号に掲げる事項の分析(以下「経営状況分析」という。)については、第二十七条の三十一の規定及び第二十七条の三十二において準用する第二十六条の七の規定により国の登録を受けた者(以下「登録経営状況分析機関」という。)が行うものとする。” 〈建設業法より抜粋〉 |
発行された「経営状況分析結果通知書」は、国土交通大臣や都道府県知事による「経営規模・技術力・その他社会性等」の審査を受ける際に提出します。

経営状況分析は経審の点数を左右する重要な要素
経営状況分析結果(Y)は経審評価全体の20%を占める重要な評価項目です。

企業規模の大小はあまり関係なく、効率的な経営ができているかどうかを測る指標が多いのが特徴です。
そのため、売上が高い会社でも点数が低くなる場合があり、反対に売上規模が小さくても高得点を獲得できるケースもあります。
つまり「規模より健全性・効率性」が重視されるため、どの会社にとっても改善の余地があり、戦略的に取り組むことで経審の総合点に大きく影響を与えるのです。

経営状況分析は会社経営と直結する
経営状況分析は、単に「経審のための点数評価」ではありません。
実際には会社の経営状況そのものを表す8つの財務指標から成り立っており、「負債抵抗力」、「収益性・効率性」、「財務健全性」、「絶対的力量」を客観的に把握できる仕組みになっています。
具体的な指標は以下の8つです。
〈負債抵抗力〉
①純支払利息比率:「支払利息-受取利息配当金/総売上高×100」
売上に対して実質的な利息がどの程度あるかを示す指標
②負債回転期間:「流動負債+固定負債/総売上高(月)」
負債が月平均売上の何か月分に相当するかを示す指標
〈収益性・効率性〉
③総資本売上総利益率:「売上総利益/総資本(2期平均)×100」
調達した資本をどれだけ効率よく運用しているかを示す指標
④売上高経常利益率:「経常利益/総売上高×100」
売上高に対する経常利益の割合、総合的な収益力を示す指標
〈財務健全性〉
⑤自己資本対固定資産比率:「自己資本/固定資産×100」
固定資産を自己資本でどれくらい調達しているかを示す指標
⑥自己資本比率:「自己資本/総資本×100」
自己資本と他人資本のバランス、資金調達の健全性を示す指標
〈絶対的力量〉
⑦営業キャッシュフロー:「営業CF(2期平均)/100,000千円」
営業活動により生じたキャッシュの大きさを示す指標
⑧利益剰余金:「利益剰余金/100,000千円」
利益のストックがどのくらいあるかを示す指標
これらは日々の経営の積み重ねがそのまま反映される指標です。
つまり経営状況分析は、経審の点数だけでなく、会社の経営改善に役立つものとも言えるのです。
経営状況分析の点数を改善するポイントは取捨選択
8つの指標をすべて追いかける必要はありません。
自社の状況に応じて、改善の余地がある指標なのか、そうでないのかを見極めることが重要です。
例えば、⑥営業キャッシュフローや⑦利益剰余金は大企業を対象にしているような計算式になっていますし、一朝一夕で改善できる指標でもありません。
逆に、①純支払利息比率や②負債回転期間は、借入の整理・見直しを行うことで改善の余地が十分にある指標です。
このように、取り組みやすさ・効果の大きさには差があります。
経審対策として重要なのは「限られた経営資源で、どこを改善すれば点数に直結するか」を判断することです。
自社の経営状況を見ながら、優先順位をつけて取り組めば、効率的に点数を底上げすることができます。
経営状況分析に必要な書類と申請の流れ
経営状況分析を申請する際には、書類の不備や提出順序を間違えるとやり直しが必要になり、時間も手間もかかってしまいます。
ここでは、必要な書類と申請のステップを整理してご紹介します。
【必要書類】
経営状況分析には以下の書類が必要です。
●経営状況分析申請書
会社の基本情報、審査基準日・対象事業年度、減価償却実施額などを記載する書類
●財務諸表
貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書など。
※はじめて申請する場合は、過去3期分必要
※税抜きで作成(建設業会計基準)
●法人税申告書 別表16(1)(2)
減価償却実施額を確認するために必要。
※「リース資産」「一括償却資産」「少額減価償却資産」「無形固定資産」も減価償却処理している場合は、別表16(4)(6)(7)(8)も必要
※はじめて申請する場合は、過去3期分必要
●建設業許可通知書の写し
有効期限内のもの。
※商号、代表者名、住所等に変更がある場合は、変更届(受付済)が必要。
【申請の流れ】
(1)書類作成
財務諸表(税抜きで作成)、経営状況分析申請書を準備。
(2)オンライン申請
分析機関のシステムに必要書類データをアップロード。
(郵送申請も可能だか、オンラインが一般的)
(3)分析手数料支払い
概ね12,000円~14,000円。支払方法は分析機関によって異なる。
(4)分析結果通知書受け取り
申請から3日~1週間程度で「経営状況分析結果通知書」が発行される。
【決算変更届との関係】
原則としては、決算変更届を提出してから経営状況分析を申請します。
ただし、分析で修正が発生した場合に訂正届が必要になることから、実務上は「経営状況分析→決算変更届→経審」の順で進める方が効率的です。
最後に
経営状況分析は「経審の点数を計算するための手続き」と思われがちですが、実際には会社の財務健全性等を客観的に評価する仕組みです。
点数を上げることはもちろん重要ですが、それ以上に資金繰りの安定や利益の積み上げといった経営の本質的な改善にもつながります。
自社にとって改善しやすい指標を選び、優先順位をつけて取り組むことが、効率的な点数アップと経営の強化につながります。
公共工事の受注を狙う事業者にとって、経営状況分析を正しく理解し、戦略的に活用することは必要不可欠といえるでしょう。
![]() | この記事の執筆者 逸見 龍二(へんみ りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。 ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、 建設キャリアアップシステムをサポート。 |
当事務所では、大阪府知事の建設業許可を中心に申請代理、その他経営事項審査や入札参加資格申請までサポート全般を承っております。建設キャリアアップシステムについても代行申請を全国対応で承っております。
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