経審W(社会性等)とは?点数改善の仕組みと上げるための実践ポイントを徹底解説!
- Ryuji Hemmi

- 10月15日
- 読了時間: 8分

経営事項審査(経審)では、「売上が高くても点数が伸びない」と悩む業者が少なくありません。
その原因の多くは、評価区分「W(社会性等)」の仕組みを十分に理解していないことにあります。
W(社会性等)は、経審の中でも会社の信頼性・法令遵守・働き方の健全性を評価する重要な分野であり、点数改善のカギを握っています。
この記事では、W(社会性等)の評価項目の内容と、点数を上げるために実際に取り組むべき改善策をわかりやすく解説します。
経審の全体像を確認したい方は、以下の記事もご覧ください。
💡この記事のポイント ●経審の「W(社会性等)」は、会社規模に関係なく点数改善が狙える評価カテゴリー ●建退共・防災協定等は加点・信用の両面で重要 ●CPD・CCUS・ワークライフバランス認定で中長期的な加点を確保 ●即効性と効果のバランスを見ながら、W点改善の優先順位を明確にすることが鍵 |
▼目次
5.最後に

経営事項審査(経審)における「W(社会性等)」の位置付け
経審の点数は、5つの評価カテゴリーで構成されています。
5つのうち、2つは業種別の評価で残り3つは会社(事業者)全体の評価です。
【 Z 】技術力 (業種別) 【X1 】完成工事高 (業種別) 【X2 】自己資本・利益額 (全体) 【 Y 】経営状況分析 (全体) 【 W 】社会性等 (全体) |
以下のようにそれぞれに係数をかけ、足し合わせた数値が経審の点数(総合評定値P点)と言われるものです。
総合評定値P点=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.20+Z×0.25+W×0.15 |

上図からもわかるように「X2(自己資本額・利益額)」、「Y(経営状況分析)」、「W(社会性等)」は、総合評定値P点の土台となるので、積極的に取り組むべき評価カテゴリーです。
中でも「W(社会性等)」は手をつけやすく、点数改善が見込める評価カテゴリーと言えます。
「W(社会性等)」を構成する8項目
「W点(社会性等)」はW1~W8までの8項目について評価されます。
W1 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取り組みの状況 ▲120~77点 W2 建設業の営業継続の状況 ▲60~60点 W3 防災活動への貢献の状況 0点 or 20点 W4 法令遵守の状況 ▲30点~0点 W5 建設業の経理の状況 0点~30点 W6 研究開発の状況 0点~25点 W7 建設機械の保有状況 0点~15点 W8 国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況 0点~10点 |
以下の計算式で算出されます。
会社の規模に関係なく点数化できる項目が多いのが特徴です。
(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8)×10×175/200=W(▲1837~2073点) |
●建設工事の担い手の育成及び確保に関する取り組みの状況(W1)
人材育成・確保に向けて労働環境の整備を行っているかどうかが評価のポイントとなります。
W1-1~W1-3 雇用保険、健康保険、厚生年金保険に未加入の場合は減点(1つにつき▲40点)
W1-4~W1-6 建退共、退職一時金・企業年金、法定外労災制度に加入・対応で加点(1つにつき+15点)
W1-7 若年の技術者及び技能労働者の育成・確保の取り組みによって加点されます。
W1-8 技術者のCPD単位取得や技能者のCCUS技能レベル向上の取り組みによって加点されます。
W1-9 えるぼし認定やくるみん認定、ユースエール認定といったワークライフバランス改善の取り組みで加点されます。
W-1-10 元請を対象にCCUSによる就業履歴蓄積に必要な処置が実施できていれば加点されます。
●建設業の営業継続の状況(W2)
建設業許可を受けてから経過した年数が、営業年数として評価されます。
休業期間は計算には入りません。
(営業年数-5(年))×2=評価点 |
60点が最高点(営業年数35年上限)になります。
営業年数が35年以上あっても60点を超えることはありません。
営業年数が5年以下の場合は0点となります。6年以上なければ点数がつきません。
なお、民事再生法または会社更生法の適用があった場合は▲60点の減点となります。
●防災活動への貢献の状況 (W3)
国や独立行政法人、地方自治体と直接防災協定を結んでいる場合又は加入している団体が防災協定を結んでいる場合は20点加点されます。
●法令遵守の状況 (W4)
審査期間内に行政庁から営業停止処分や指示処分を受けた場合は減点されます。
指示処分 ▲15点 営業停止処分 ▲30点 |
●建設業の経理の状況 (W5)
経理の信頼性の向上に取り組んでいると加点されます。
・監査の受審状況
会計監査人の設置 +20点 会計参与の設置 +10点 経理処理の適正を確認した旨の書類提出 +2点 (社内の経理実務責任者(公認会計士、税理士、登録1級建設業経理士、1級建設業経理士合格者)自主監査) 無 0点 |
・公認会計士等の数
公認会計士等の数×1+登録経理士講習実施機関に登録された2級建設業経理士の数×0.4 |
●研究開発の状況 (W6)
研究開発費の金額が評価対象になります。
会計監査人設置会社である必要があるので、対象となるケースは少ないかもしれません。
●建設機械の保有状況 (W7)
災害時の備えとして建設機械の保有状況が評価されます。
特定自主検査等を受けていることが条件になります。
審査基準日以降1年7ヶ月以上契約が残っているリース契約による機械も対象となります。
ショベル系掘削機 ブルドーザー(3トン以上のもの) トラクターショベル(バケット容量0.4㎥以上のもの) モーターグレーダー(5トン以上のもの) ダンプ車(土砂禁止は対象外) 移動式クレーン(つり上げ荷重3トン以上のもの) 締固め機械 解体用機械 高所作業車(高さ2m以上のもの) |
1台保有で5点加算、以降1台増えるごとに1点加算、上限は15点となります。
15台以上保有していても15点となります。
●国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況(W8)
ISO認証の取得で加点されます。
ISO9001(品質マネジメントシステム) +5点 ISO14001(環境マネジメントシステム) +5点 エコアクション21 +3点 |
ISO14001とエコアクション21は重複して加算されません。最高で10点加算されます。
「W(社会性等)」の点数を上げる実践ポイント
W点は会社の信頼性・法令遵守・労働環境・社会的貢献などを総合的に評価する項目です。
構成要素の中には、短期間で整備・改善できる実務的ポイントが多く存在します。
ここでは、点数アップに直結する取組を重点的に紹介します。
●保険・退職金制度など「福利厚生」から着手
福利厚生に関する取組は、短期間で改善効果が出やすい項目です。
従業員満足度にもつながります。
💡ポイント ・建退共へ加入し、適正に履行する(証紙購入・貼付・手帳更新) ・法定外労災(上乗せ労災)への加入する |
●技能者のCCUS・技術者のCPDで安定加点を狙う
従業員育成・レベルアップへの取組は、経審改正後に大きなウェイトを占めるようになっています。
建設キャリアアップシステム(CCUS)やCPD(継続学習制度)を活用することで、加点が得られます。
💡ポイント ・技術者がCPD単位を取得している ・技能者のCCUSレベルが2以上に達している ・1人当たりのCPD単位数、CCUSレベルアップ人数割合が重要 |
●ワーク・ライフ・バランスに関する取組は「差別化の決め手」
労働環境や多様な働き方への配慮が評価されます。
厚生労働省の認定制度(えるぼし・くるみん・ユースエール)を活用すると、加点されます。
💡ポイント ・認定までは時間がかかる ・採用活動等でプラス効果が見込める ・自治体によっては入札参加の際に加点対象となる |
●防災協定の締結で加点を確実に取る
防災活動への貢献(W3)は、175点(P点換算26点)と非常に価値が高い“確定加点”項目です。
自社が直接でなくても、所属団体を通じて自治体・国と防災協定を締結している場合に評価されます。
💡ポイント ・所属団体経由の防災協定で加点対象になる ・すぐに申請でき、即効性がある |
優先すべき項目と改善ステップ
以下の表は、W点における代表的な改善項目を「難易度」「即効性」「点数効果」で整理したものです。
限られたリソースの中で効率的に点数アップを狙う際の参考にしてください。
特に中小事業者では、W3(防災)とW1-9(ワークライフバランス)は取り組みが遅れている企業が多く、**「ライバルが取っていない加点」**として有効です。
改善項目 | 難易度 | 即効性 | 点数効果 | コメント |
建退共加入(W1) | ★☆☆ | ★★☆ | 高 | 信用・加点両取り |
法定外労災(W1) | ★☆☆ | ★★★ | 高 | 信用・加点両取り |
CPD・CCUS活用(W1) | ★★☆ | ★★☆ | 中 | 従業員育成で安定加点 |
ワークライフバランス認定(W1) | ★★★ | ★★★ | 低 | 企業価値も向上 |
防災協定締結(W3) | ★☆☆ | ★★★ | 高 | 所属団体経由でもOK |
最後に
「W(社会性等)」は、売上規模や業歴とは関係なく点数を上げられる“平等な評価カテゴリー”です。
中小建設業者でも、社会保険の加入やCCUSの導入、ISO認証などを通じて高得点を狙うことが可能です。
経審は「数字の勝負」であると同時に、「信頼の証明」でもあります。
W点の改善に継続的に取り組むことは、単なる点数アップを超えて、会社の信頼性・人材定着率・入札競争力を高める第一歩です。
「自社のどこを改善すべきか分からない」「どの取り組みが加点対象になるか知りたい」という方は、建設業専門の行政書士に相談してみてください。
![]() | この記事の執筆者 逸見 龍二(へんみ りゅうじ) アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、建設業専門の行政書士事務所を開設。 知事許可・大臣許可ともに特殊案件含め実績多数。経営事項審査も年商数千万円の企業から40億円規模の企業まで幅広く対応。入札参加資格審査申請は全国自治体で申請実績あり。事務所HP |
当事務所では、大阪府知事の建設業許可を中心に申請代理、その他経営事項審査や入札参加資格申請までサポート全般を承っております。建設キャリアアップシステムについても代行申請を全国対応で承っております。
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