「建設業許可が必要になったので、とりあえず建築一式の許可を取りたいのですが…」
このようなケースでは、ほとんどが許可を取る業種の判断を間違っています。
ゼネコンやハウスメーカーは、建築一式工事の許可がなければ成り立ちません。
工務店や住宅を建てて販売するような不動産業者も建築一式工事の許可がなければスタートラインに立てないでしょう。
本当に建築一式工の許可が必要な事業者の大半は、「許可が必要になったから取る」というよりも本来は「創業時から建築一式工事の許可が必要」と言っても過言ではないのです。
もちろん、創業時に許可要件を満たせず、スモールスタートで機を見て建築一式工事の許可を取る場合や新たな事業として建築工事業を始める場合なども十分考えられます。
まずは本記事で建築工事業について正しく理解し、許可の要件や手続き等を参考にしていただければと思います。
▼目次
(3)請負金額に関する注意点
(1)経営能力があること
(2)技術力があること
(3)財産的基礎があること
(5)営業所を有していること
(2)必要な申請書類を作成する
5.最後に
建築工事業の許可に関する基礎知識
建築工事業の許可を取る上で知っておくべきことを3つ解説します。
■ 建築一式工事に該当する工事とは
■ 建築工事業の許可を取るメリット
■ 請負金額に関する注意点
建築工事業の許可を取ると、どのような工事を請け負うことができるのか、どんなメリットがあるのか等、正しく理解しておきましょう。
◎建築一式工事に該当する工事とは
建築工事業の許可を取ると、1,500万円以上の建築一式工事を請け負うことができます。
建築一式工事とは、総合的な企画、指導、調整のもと建築物を建設する工事のことです。
基本的には、元請として請け負い、施工する工事のことを指します。
下請として建築一式工事を請け負うこともありますが、基本的には元請として請け負うことを想定しておいた方が良いでしょう。
具体的な工事例としては、建築確認を必要とするような住宅の新築・増改築工事や商業施設新築工事(解体も)等。
◎建築工事業の許可を取るメリット
そもそも1,500万円未満の建築一式工事というものをあまり見かけることがないので、メリット以前に許可がなければ参入自体が難しい業種と言えます。
以下、一般的に考えられるメリットです。
✅取引先や金融機関など、対外的な信用度が上がる。
✅元請として大規模な工事を受注できるようになる。
✅建築一式工事で公共工事の入札参加が可能になる。(別途、経営事項審査の手続きは必要)
◎請負金額に関する注意点
請負金額1,500万円には消費税が含まれ、注文者が材料提供する場合は材料費と運送費も含まれます。
契約書や請求書を分割しても、実態として1つの工事であれば、当然に合計金額で見られます。
一般建設業許可の場合、元請として請け負った工事のうち、7,000万円(建築一式工事以外は4,500万円)以上を下請に発注することができません。
1次下請から2次下請への発注金額には制限がありません。
※請負金額自体には制限がありません。
建築工事業の許可を取るための要件
建築工事業の許可要件5つを解説します。
■ 経営能力があること
■ 技術力があること
■ 財産的基礎があること
■ 欠格要件に該当していないこと、誠実性があること
■ 営業所を有していること
許可要件を一つずつ入念に確認していきましょう。
特に経営業務の管理責任者と専任技術者は重要な要件であり、建設業許可制度の要です。
◎経営能力があること
●常勤役員等(経営業務管理責任者)
法人であれば役員、個人事業主であればその本人に、建設業での経営経験が5年以上必要です。
建設業での経営経験とは、建設会社の役員等または建設業を営む個人事業主としての経験のことをいいます。経験内容は特に建築一式工事である必要はありません。
他にも要件を満たす方法はありますが、認められないケースも多く、難易度が上がります。
以下のリンク記事で詳しく解説しています。
●社会保険への加入
法律上加入義務のある保険に正しく加入していることが求められます。
健康保険・厚生年金保険・・・法人または従業員5人以上の個人事業主は適用事業所
雇用保険・・・法人・個人事業主関係なく、1人でも雇用していれば適用事業所
◎技術力があること
●専任技術者
建築工事業の専任技術者になり得る国家資格を保有している人か、建築一式工事の一定以上の実務経験がある人を営業所ごとに専任の技術者として配置しなければなりません。
専任技術者についてさらに詳しい解説は以下のリンク記事でご確認ください。
【建築工事業の専任技術者になり得る国家資格】
・1級建築施工管理技士
・2級建築施工管理技士(建築)
・1級建築士
・2級建築士
※1級は特定建設業許可においても専任技術者になることができます。
【一定以上の実務経験】
実務経験とは、建築一式工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいいます。
ただ単に建築工事の雑務のみ行っていた場合は経験として認められません。設計技術者や現場監督や土工及びその見習いの経験等は認められます。
原則10年以上の経験が求められます。
建築一式工事の性質上、実務経験は原則、建設業許可業者での経験が必要と考えておいた方が良いでしょう。
>実務経験期間の短縮
以下の指定学科を大学で修了した人は実務経験3年、高校で修了した人は実務経験5年に短縮できます。
〈指定学科〉
建築学又は都市工学に関する学科
■一般建設業…上記国家資格のいずれか又は10年以上の実務経験 ■特定建設業…上記の1級相当国家資格 |
通常、一般建設業の専任技術者要件をクリアし、さらに2年以上の指導監督的実務経験があれば、特定建設業の専任技術者になることができます。
しかし、指定建設業7業種の1つである建築工事業の場合は認められません。
建築工事業で特定建設業の専任技術者になるには、「1級建築施工管理技士」、「1級建築士」しか選択肢がないということです。
◎財産的基礎があること
>一般建設業許可の場合
直前の決算で純資産合計が500万円以上あることが求められます。
なければ、500万円以上の預金残高(資金)で金銭的信用があることを証明する必要があります。
>特定建設業許可の場合
直前の決算期の財務諸表において以下のすべてをクリアしていることが求められます。
✅欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
✅流動比率が75%以上であること
✅資本金の額が2,000万円以上であること
✅自己資本の額が4,000万円以上であること
財産要件について、以下リンク記事で詳しく解説しています。
◎欠格要件に該当していないこと、誠実性があること
法人では役員や執行役、相談役、顧問、個人株主(議決権5%以上)など、個人事業主はその本人が以下の欠格要件に該当していると、許可がおりません。
請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがある場合も許可されません。
>許可制度の本質から当然に要求されること
✅申請書類や添付書類の中の重要な事項について、虚偽の記載もしくは欠落があるとき
>法人の役員等や個人事業主の欠格事由
✅破産者で復権を得ない者
✅建設業許可の取消を受けて5年を経過しない者
✅監督処分による許可取消を免れるために廃業届を提出してから5年を経過しない者
✅営業停止処分を受け、その停止期間が経過しない者
✅禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
✅一定の法令の規定に違反して罰金以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
✅暴力団員等に事業活動を支配されている者
✅暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
✅精神の機能の障害により建設業を適正に営む事ができない者
欠格要件、誠実性について、以下のリンク記事で詳しく解説しています。
◎営業所を有していること
建設業の営業を行う事務所(=建設工事に係る請負契約を締結するなど、見積り、入札、契約締結に係る実体的な行為を行う事務所)を主たる営業所として設ける必要があります。
従たる営業所(支店)を設ける場合は、その営業所に支店長や専任技術者を配置しなければなりません。
従たる営業所(支店)が主たる営業所と異なる都道府県にある場合は、国土交通大臣の許可になるのでご注意ください。
営業所の要件は以下のとおりです。
✅営業所として常時使用する権限を有していること。
✅建物の外観または入口で、商号または名称が確認できること。
✅固定電話、事務機器、机等什器備品を備えていること。
✅許可取得後は、建設業の許可票を掲示していること。
✅経営業務の管理責任者(従たる営業所は支店長等)、専任技術者が常勤して専らその職務に従事していること。
営業所について以下のリンク記事で詳しく解説しています。
建築工事業の許可を取るための具体的な申請手続き
建築工事業許可の具体的な申請手続きについて解説します。
■ 許可要件の証明資料を揃える
■ 必要な申請書類を作成する
■ 行政庁窓口に申請書類を提出する
所定の申請書類を作成して提出するだけではなく、許可要件を満たしていることを証明する資料を準備しなければなりません。
証明資料は都道府県によって判断が異なるものがあるので、事前に手引き等を確認しましょう。
◎許可要件の証明資料を揃える
常勤役員等(経営業務管理責任者)の経営経験5年以上を証明する資料、専任技術者の国家資格を証する書面または実務経験を証明する資料、財産的基礎を証明する財務諸表や残高証明書など、各要件を満たしていることを客観的に証明する資料を準備します。
経営業務の管理責任者の経営経験と専任技術者の実務経験は、特に他社証明(過去に勤めていた会社での経験を証明)の場合、証明書類を揃えることが難しく、許可取得の障壁になることが多くみられます。
◎必要な申請書類を作成する
新規・業種追加・般特新規、申請パターンに応じて必要な書類を作成・取得します。
法人・個人で差がありますが、新規の場合は20種類ほどの書類が必要です。
◎行政庁窓口に申請書類を提出する
申請書類は正本1部と副本1部を提出します。
都道府県によって書類の綴じ方が異なりますのでご注意ください。
申請にかかる費用については、知事許可は申請手数料として9万円(新規)、大臣許可は登録免許税として15万円(新規)が必要となります。業種追加の場合は、知事許可、大臣許可いずれも5万円です。
申請受付窓口は大臣許可と知事許可で異なります。
都道府県にまたがって営業所を置き、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県、京都府、福井県に主たる営業所を置く場合は、近畿地方整備局(大阪市中央区)が窓口になります。
大阪府のみに営業所を置く場合は、大阪府知事許可を受けることになり、大阪府庁咲州庁舎(大阪市住之江区)が窓口になります。
(知事許可/申請窓口)
(大臣許可/申請窓口)
建築工事業の許可に関してよくある質問
建築工事業の許可を取るにあたって頻繁にいただく質問をピックアップしました。
Q.建築工事業(建築一式工事)の許可があれば、内装仕上工事や建具工事等の専門工事も単体で請け負うことができますか?
建築工事業は原則元請として住宅等の建築一式工事を請け負い、総合的に工事の取りまとめを行うことができる業種です。
内装仕上工事等の専門工事は一式工事の中に含まれていますが、専門工事単体になると、各専門工事の許可が必要になります。
Q.建築一式工事を下請として請け負うことはできるのでしょうか?
建築一式工事を下請として請け負うということは、工事の性質上、一括下請負(丸投げ)という扱いになります。
公共工事では一括下請負(丸投げ)が一切禁止されています。
民間工事のみ、あらかじめ発注者から書面で承諾を得ていれば、合法的に一括下請(丸投げ)が可能です。
戸建て住宅の建築一式工事をハウスメーカーから注文を受けた工務店が下請として請け負うパターンが考えられます。
共同住宅や大型商業施設等の場合は、承諾を得たとしても一括下請(丸投げ)は認められません。
一括下請負については、以下のリンク記事で詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。
最後に
以上、建築工事業(建築一式工事)の許可を取る上で重要なポイントを解説いたしました。
特に経営能力(経営業務の管理責任者)と技術力(専任技術者)の要件が高いハードルに感じるのではないでしょうか。
実際の申請現場ではイレギュラーなことがよく起こります。
要件を満たしていると喜んだのもつかの間、それを証明する書類がわずかに不足し、許可取得を断念するケースも出てきます。
建築工事業(建築一式工事)の許可要件を満たしているのかどうか、証明資料が合っているのかどうか、不安な方は一度、専門家に相談してみてください。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。 ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、 建設キャリアアップシステムをサポート。 |
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